【新卒採用インタビュー】STORY3:ゲームに学ぶ、ユーザー体験の本質。

“ゲームの良し悪しは、UXの設計で決まる。”

ネイティブゲーム制作の本質は、「ユーザー体験(UX:User Experience)」の設計にある。その手法の一つとして、例えば「ペルソナ」が挙げられる。それは、想定ターゲットを一人に絞り、何歳で、どんな仕事をしていて、どんな食べ物が好きで、休日はどんなことをしていてと具体的に人物像を作り上げ、その人物がサービスやプロダクトをどんな風に使って、どんなユーザー体験を得るのかを想像して検証していく手法だ。そして、ネイティブゲームで考えるペルソナの数は想像以上に多い。2012年に新卒で入社し、ディレクター兼リードプランナーとして『ソードアート・オンライン メモリー・デフラグ』を手掛ける柳原 陽太氏は、開発過程をこう語る。

「考えたペルソナの数は30を超えます。年齢や性別、職業などを軸に考えたペルソナもありますし、ゲームユーザーとしてのレベルの違いを軸にして考えたものもあります。ゲームを体験するターゲットを具体的に想像し、多岐にわたるペルソナを考えるのです。『どうやってゲームを知るか』から始まり、興味を持ち、ダウンロードして起動し、継続して遊んでもらうところまでのストーリーを緻密に考えていきます。ゲームの核となるコンセプトやアイデアは最も重要な要素ですが、ユーザー体験が正しく設計されていなければ、それも台無しになってしまいます」

ユーザー体験の設計は、ゲームだけでなく日常のさまざまな場面で行われている。例えばスターバックスには、家でも学校でも職場でもないくつろげる場所「サードプレイス(第3の場所)」という体験コンセプトがある。サードプレイスは、例えば行きつけのお店、仲間がいる英会話教室、旅人同士で会話が生まれる温泉などが当てはまるのだが、スターバックスは商品から内装、接客までさまざまな要素を、サードプレイスになるために設計している。会長兼CEOのハワード・シュルツ氏は、「スターバックスはコーヒーを売っているのではない。体験を売っているのだ」と述べる。

実はネイティブゲームとカフェには、ある共通点がある。それは、「顧客がファンになってもらわないといけない」という点だ。開発に「完成」という終わりがあるコンシューマーゲームと違って、ネイティブゲームはリリースした後も開発が続く。「完成」という終わりはないのだ。

「私たちは常に期待されています。その期待に応え続けなければいけないのです」(柳原氏)

だからこそ、コンセプトやアイデアを生かし続けるユーザー体験の設計がネイティブゲーム開発の肝と言っても過言ではない。世界観やストーリー、グラフィック、キャラクターモーション、サウンド、レベルデザイン、ユーザーインターフェース(UI)……。考えなければいけないことはただでさえ他のインターネットサービスと比較しても格段に多く複雑なのだが、スマートフォンの画面では完結しない点もネイティブゲーム開発の難しさと言える。TVCMなどの広告や、お客さまに実際に足を運んでもらうリアルイベント、Twitter・Facebookなどのソーシャルメディアといったゲーム以外の要素もあるのだ。

例えば、グリーのネイティブゲームと言えば『消滅都市』が挙げられるが、同作はまさにゲーム画面を越えたユーザー体験を提供してきた成功例と言える。「東京ゲームショウ」や「ニコニコ超会議」などのリアルイベントが開発スタッフとファンの絆を深め、一体となってゲームを育ててきた。そして、『消滅都市』は2016年に『消滅都市2』としてアップデートし、今年5月に3周年を迎える。グリーが目指すゲームは、単に「遊んで面白いもの」ではない。ユーザーの生活に寄り添い、常に進化し続け、「長く愛されるもの」なのである。


柳原 陽太/2012年入社。ディレクター兼リードプランナー

“ゲームから学ぶ、インターネットの本質。”

ネイティブゲームには、インターネットサービスを構成する「ユーザー体験」のエッセンスが全て凝縮されていると断言しても、過言ではない。もともとソーシャル・ネットワーキング・サービスを開発していたグリーがゲームをつくるようになったのも偶然ではなく、必然と言えるだろう。2016年にグリーのインターンで初めてゲーム開発を経験し、現在はゲームプランナーとして活躍する天利 朱氏は、ゲーム開発に携わる中でユーザー体験の奥深さを実感した一人だ。

「私はユーザー体験に関わる領域の仕事がしたいと思って就職活動をしていて、ゲーム開発にはほとんど関心がありませんでした。でも、『GREE Camp』というグリーのインターンに参加して考え方が変わったんです。内容はデザイナーやエンジニアを目指す学生たちとチームを組んでゲーム開発に取り組むといったものでしたが、アイデア勝負でもないし、絵が綺麗なら良いとか、操作しやすければ良いとか、そんな単純な話ではないということに気付かされました。すべての要素を組み合わせて、チームとしてさまざまな角度から、ひたすらユーザーの体験を考える。それは、これまで経験したことがないものでした。

そして、そこで得た感覚は現在のゲーム開発の経験で確信に変わりました。ゲームは長く遊んでもらうためにつくっているのですが、その『長く』は1年、2年という意味でもあり、1時間、2時間という意味でもあります。長くゲームで遊んでいただくためには、いろいろな欲求をゲームの中で満たす必要があります。ちょっとカッコつけ過ぎかもしれませんが、『起きてから寝るまでの喜怒哀楽を用意する』というイメージです。こういったゲーム開発で味わうユーザー体験の設計の奥深さは、今後ゲーム以外のインターネットサービスをつくる機会が来ても生かせるものだと考えています。」


天利 朱/2016年入社。ゲームプランナー

同じく2016年に新卒で入社しゲームプランナーとして活躍する森下 滉大氏も、ゲーム開発の困難さと、そこから得られることの多さを強調する。

「ネイティブゲームの開発は1本をつくる期間が長くなり、開発規模も大規模化し続けているのが現状です。そんな環境の中で、『楽しい』とか『ワクワクする』といったユーザー感情を生み出すためには、『これをやればいい』といった正解が無いことがしばしばあります。そういったときに重要になってくるのが、プロデューサーやディレクターのリーダーシップであり、プロジェクトマネジメントです。時には理詰めで、時には熱量で、手を変え品を変えプロジェクトを前に進めていく優秀な先輩たちを見ていると、今のネイティブゲーム市場でヒットするゲームを完成させることができたら、ゲームに限らずどんなプロダクトでもつくれるんじゃないかとさえ思えてきます」


森下 滉大/2016年入社。ゲームプランナー

現在のネイティブゲーム市場は成熟期を迎え、しっかりとユーザー体験までつくりこまれた「本物」だけが生き残れる時代になっている。理想を現実にしていく高い技術力も重要となるが、そもそも「ユーザーはこういったものを求めるはずだ」という理想の部分がズレていたら、それは絶対に水が出ない場所で井戸を掘り続けるようなもの。だからこそ世の中の流れや変化に敏感な若手の存在は、競争力を高めるための重要なポイントになってくる。
「『誰が言うか』ではなく『何を言うか』の文化を常に感じています。先輩から『天利さんはどう思う?』と聞いてもらえることが嬉しいです。それは単に若手に優しくしてくれるわけではなくて、私には私の仕事があって、一人のプロとして意見を求められているのです。びっくりするぐらい自分の意見が採用されるときがあるので、やる気が出る反面、すごく緊張感があります。だからこそ、もっともっと、このチームのプラスになりたいと思っています」(天利氏)

「グリーには、とにかくものづくりが好きな人が多くいます。一緒に働く仲間から常に刺激を受けていますし、同期とは仕事終わりや休日に集まって、業務とは別にゲームづくりをしたりもしています。また、経営陣やマネージャー層との距離が近いのも特徴です。例えば、今の上長は荒木さんで、すぐ横の席に座り、毎日コミュニケーションをとっています。ネイティブゲーム部門を束ねる取締役が、新卒の提案した企画や仕様を直接レビューしてくれるので、当然プレッシャーもありますが、若手も一人の戦力として期待されているんだと実感できます。また、思い返せば、最初に配属された部署ではマネージャーだけでなく、トレーナーも複数人付いてくれて、様々な挑戦をサポートしてもらいました。若手にチャレンジングなことができるように機会を与え、多方面からバックアップする環境がある。新卒の成長にとって大きな意味があると、1年働いて感じています」(森下氏)

“ゲームの力が、社会で生きる。”

ゲーム開発を通じて、ゲームづくりの面白さにのめり込んでいく社員もいれば、そこで学んだことをインターネットのサービスづくりに生かしていく社員もいる。グリーではさらに、「ゲーミフィケーション」と呼ばれるゲームの力をゲーム以外のさまざまなことに生かそうと取り組んでいる社員もいる。特にCSR(企業の社会的貢献)活動で行われている千葉大学教育学部との共同授業は、マスメディアの取材を受けるなど注目されているプロジェクトだ。

このプロジェクトは、将来教員を目指す学生たちが教育におけるゲーミフィケーションについて理解を深め、実際に教育のためのゲームを制作するというもの。講義にはプランナーやデザイナーなど実際にゲーム開発を行っている社員が参加し、学生たちにユーザー体験の考え方をはじめとしたゲームの仕組みを学んでもらう。ゲーム制作にはエンジニアが参加し、最後はグリー本社がある六本木ヒルズでハッカソンと呼ばれる開発合宿と発表会が行われる。2014年からは、実際に小学生に遊んでもらう実証実験も行われている。

千葉大学教育学部の藤川大祐教授は、「学校にはたくさんの子どもたちが集まっているわけですから、仲間と共に楽しみながら学べる仕組みがほしいと考えていました。そこでヒントになったのが、グリーがこれまでに数多く手掛けてきたソーシャルゲームです」と話す。発表会には審査員として取締役が参加し、会社としても重要なプロジェクトだと位置付けられている。日々の仕事が、未来を担う子どもたちの教育に生きる。そこにやりがいを感じ、毎年の共同授業を楽しみにしている社員も少なくない。藤川教授は、参加するグリー社員が学生たちに与える影響も大きいと言う。

「グリーの社員は『良いものをつくりたい』という情熱が旺盛で、そのためには地味な仕事も厭わず一つひとつの作業を実に丁寧にこなしていく。精神的にも身体的にも非常にタフだなという印象を持っています。『何か新しいことにチャレンジしていこう』という姿勢も学生たちにいい影響を与えているようです。協力いただいているエンジニアやデザイナーの方々からは、ゲームづくりに関する知識や技術的なこともさることながら、物事に取り組む姿勢についても大いに学ばせてもらっています」(藤川教授)

ゲーム開発に携わるグリー社員たちは日々、画面の先にいるお客さまを想像し、新しいゲームを生み出し、つくり出したゲームをより長く楽しんでもらうために苦悩している。自分たちの挑戦が、未来の創造につながっていると信じているからだ。グリー社員たちの目線は常に高く、常に遠くに向かっている。

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