【Management Voice】#06 小竹 讃久「次の成長を、この手でつくり出す。原動力は、仲間への想い」

グリーグループの役員に、事業や個人のことなどをインタビューする本企画。第6回は、グリーエンターテインメント株式会社の代表取締役に就任した小竹讃久さんです。

【プロフィール】
グリー株式会社 取締役 上級執行役員 兼 グリーエンターテインメント株式会社 代表取締役
小竹 讃久

2008年11月、グリー株式会社に入社しプロモーション業務や広告事業に従事する傍ら、プラットフォーム事業拡大のための開発パートナー開拓に注力。2011年4月、執行役員 マーケティング事業本部長に就任。2013年9月、グリー株式会社 取締役に就任。2021年7月1日より、グリーエンターテインメント株式会社の社長を務める。

「インターネット業界に行くしかない」

ーーはじめに、ご自身のご経歴を教えてください。

小竹:2000年に大学院を修了し、広告代理店に入社して営業職として働いていました。グリーに転職したのは2008年。テレビCMなどの広告を出す担当として入社したんですが、そもそも人数が少なかったので、プロモーションだけでなく広告をもらう側の仕事もやることになり、さらには芸能人ブログを集めてくるとか、とにかくどんどんやることが増えていきました(笑)。2010年頃からプラットフォーム事業「GREE Platform」を開始したのですが、ゲームやいろんなコンテンツを集めてくる外部営業部隊が必要だということでその立ち上げをして、2013年くらいに実施された大きな組織改編後はプラットフォーム事業全体を管掌するようになり、今はプラットフォーム事業とライセンス事業を見つつゲーム事業にも携わり、ファンプレックスというゲーム運営に特化した会社の取締役を務めています。

ーー広告代理店からグリーに転職したきっかけとは?

小竹:そもそも広告代理店に入ったのはマーケティングという横文字に憧れていたのもあるんですが、広告って投資額が大きいので、その裏には経営的な判断がなされているはずだし、そういう大きな意思決定ができる人と直接話ができる機会がある業種だと思ってこの世界に飛び込んだんです。すごく良い経験になりましたが、本当に事業の意思決定をしているのは自分が見ているよりもっともっと上の人で、その間の意見調整がすごく大変という現実もあって。そんな時にインターネット業界が現れて、すごい若い人がすべての意思決定をしているということに驚いたんです。当時は大手携帯キャリアさんをクライアントに持っていたのですが、関連会社の社長として30代くらいの普通のお兄ちゃんという感じの方が社長として出てきて経営の意思決定をしている。そういうのを目の当たりにして、「こういうところに飛び込まないと本当の意思決定が経験できないまま時間が過ぎてしまう。インターネット業界に行くしかない」と心を決めました。じゃあどうやって会社を探そうかと思った時に、知り合いにたまたまグリーの社員を知っている人がいて、一度会ってみないかといわれて、そこがきっかけになっています。

ーーそもそも経営や大きな意思決定に興味を持ったきっかけは?

小竹:実家が商売をやっていて、そういうのがかっこいいなという想いはあったと思います。祖父が変わった人で、私が小さい時に「男は経営者か、それ以外だ」と言っていて。言葉の意味はよく分からなかったけれど、何となく経営者というものにならないといけないんだと、子どもの時から意識していたと思います。

ーーご自身で起業しようと考えたことは?

小竹:ありましたよ。前職で、「起業アイデア会」なるものを週1でやっていて、3人くらいのメンバーでいろんな案を出してました。当時インターネットの事業が伸びていたので、海外の事例を見たり日本なりにカスタマイズできないかなんて話したりしていたんですが、ベースとなるインターネットの知識がないので、そもそもコストがどれくらいかかるのかとか調達の仕方とかよく分からないんですよね。もう誰か行かなきゃわかんなくね?という感じになって、じゃあ僕が行きますって感じで来ちゃいました(笑)。

ーー実際にインターネット業界に飛び込んでみていかがでしたか。

小竹:広告代理店での経験がベースにあるので、最初に担当した広告を出す仕事は、いくら広告費を出してどんなクリエイティブにするかとか、前職とほとんど同じようなことをしている感覚でした。ただ、自分の会社のお金を使うことになって初めて、クライアントのお金を使うのとは全然違うんだなというのは肌で感じましたね。そこからプロモーションだけでなく広報もやるようになって、当時広告料もどんどん増やしていたタイミングだったので、まあ人生でこれ以上働くことはないだろうってくらい働きました(笑)。広告は事業を伸ばすためにありますが、その事業をやっている側にいて、主体的に広告費を使って明らかに数字が伸びているとか、事業に寄与していることを実感できるというのはやりがいになりましたね。

WFSとポケラボとの3社体制でそれぞれの成功確率を高める

ーーグリーグループのゲーム事業に長く携わられていますが、これまでの歩みや現状をどう見ていますか。

小竹:プラットフォーム事業が一気に伸びて、2011年とか2012年には日本の産業のなかで、グリーはすごく注目される会社でした。そこにたくさんの若い人たちが入りたいと言って加わってくれたけど、2013年からしばらく苦しい時期が続いて、事業には山があれば谷もあるというのは必然だと思いますが、たとえ下り坂になっても次の山となる事業を生み出していくというのは僕たちがやらなきゃいけないことだって思っています。事業がすごく好調な時に入社して、今でも残ってくれているメンバーって私の管掌部門でも結構多いんですが、彼ら彼女らにはほかの会社に行くチャンスもあったと思うんです。それでもここでやり続けてくれているわけで、そういうメンバーたちの想いは自分なりに考えて受け止めているつもりだし、その子たちのためにも次の事業の山をつくりたいと常々思っていて、今回の新会社「グリーエンターテインメント株式会社」の立ち上げにもそういった想いがあります。

ーー2021年7月1日付で「グリーエンターテインメント株式会社」が設立されますが、改めてその経緯や今後の方針を教えてください。

小竹:グリーグループ内でファンプレックスやライセンス事業などを単品でいろいろ立ち上げてきたというのが現状で、これからは次の成長に向けて統合し、一つの会社としてより大きくしていこうというのが大きな経緯です。基本的な事業内容としては、ゲーム開発事業、ライセンス事業、ゲーム運営事業の3つがメインになります。中国や世界のマーケットを意識すると、日本で生まれた原作をアニメ化した作品が世界に通じるというのは十分に証明されていると思っていて。グラフィックなどは海外でもすごいものが出てきていますが、原作のクオリティに関して日本にはすごいものを生み出せる土壌があると思います。元々マンガで人気が出てアニメ化されてテレビやスマホで広がっていくというように、ゲームもまた原作を広げていく一つのツールになり得ると思っていて、そういうところをグリーエンターテインメントとして担っていけると考えています。IPの投資と開発能力の向上、この2軸を大事にしていきたいですね。

ーーWFSとポケラボとの3社体制でゲーム事業を担うことになりますが、どのようなシナジーが期待されますか。

小竹:今実際に進んでいるものもあるのですが、元々WFSでベースをつくって開発はこちらで進めるというケースもありますし、チェック体制やリリースまでの段取りなど参考にさせてもらうことはたくさんあると思っています。会社としてはまだ始まっていませんが、スタート地点からWFSとポケラボが持っているものをうまく活用させてもらえたらと思っているし、逆にいつか自分たちの資産を2社に還元するということもあり得るでしょう。現に、2社と一番連携しているのはライセンス部隊なんですが、3社がそれぞれ独立しているというより、連携できる部分はどんどん連携して、それによってそれぞれが成功確率を上げられるようになるのが一番のメリットだと思っています。

挑戦し続けられる組織をつくりたい

ーーご自身のフェイスブックでポップな写真とともに会社設立の報告をされていましたが、どのような経緯で撮影されたものなのでしょうか。

小竹:少なくとも発表はポップで明るいものにしたいと思ったんですよ。他社さん含めてどんなやり方があるのかなって調べているうちにすごく良い構図のものがあって、ほぼほぼ真似させてもらいました(笑)。一緒に写っているのはファンプレックス、ゲーム事業、ライセンス事業のそれぞれのトップで、背景のデザインはファンプレックスのデザイナーが描いてくれました。突然思いついてシャツを探しにいって、構想から3日後には撮影してました(笑)。


会社設立のプレスリリース時に個人のSNSで掲載した写真

ーー「グリーエンターテインメント」という社名に込めた想いとは?

小竹:グリーって日本で一番テレビCMを出していた時期もあって、それくらい名前は知られていると思うんですが、子会社は「グリー」をあまり使っていないんですよね。それが自分からするともったいなくて、どうせなら親会社の資産は使えるだけ使おうってことでつけました(笑)。グリーエンターテインメントって長いから略して「グリー」になるじゃないですか。それが結局一番いいんじゃないかって。周りからはひねりがないとか言われますが、僕のなかでは結構考えたんですよ(笑)。

ーー新会社のスタートにあたり、今後の展望をお聞かせください。

小竹:ゲームって1発当たったら大きいですが、実はライセンス関係ってもっと大きいと思っていて。マーケットは当然アジアにもアメリカにもあるし、今は動画配信サービスでグローバルに広がっていくし、続編やいろんな展開につながることを考えると本当に可能性の大きな分野だと思っています。アニメに投資している会社はたくさんありますが、ゲーム開発をやりながらという会社ってそう多くはない。そういう意味では自分たちの手から大きく育っていく作品が生まれてもおかしくないと思っているし、それを目指さないといけないと考えています。でも突き詰めるとやっぱり、会社が伸びていた時に入って今も頑張ってくれている人たちが、「自分たちが新しい成長をつくったんだ」って実感できるようになってもらえることが自分としての大きなゴールではありますね。働く場所を選べる自由があるなかで、いろんな想いをしながら残ってくれている人がたくさんいるわけで、そういう精神力の強い社員の皆となら必ず、次の成長をつくれると確信しています。子会社の社長というポジションで大きな意思決定をできるということ以上に、皆で成長し続ける、挑戦し続けられる組織をつくっていきたいと思っています。

ゲーム・エンタメ業界の中心地を目指す

ーー小竹さんが感じるグリーグループとは?

小竹:インターネット業界には上り坂も下り坂もあって、上っている時には組織も大きくなるけれど、下った時に背負うものもやっぱり大きくて、でもまたベンチャーと同じように次の事業を立ち上げていかなくちゃいけない。そういう波を乗り越えていくのって本当に大変なことだけれど、僕らは乗り越えて次に目を向けている。そういう意味でコアがすごく強い会社なんだと思います。まじめで頑張り屋さんが多いところは、強みとしてずっと変わっていないんじゃないですかね。

ーーご自身にとって田中さんはどんな方ですか。

小竹:精神力がすごいですよね。サラリーマン社長とは同じ職業とはいえないくらい、心持ちが全く違うと思います。2年、3年の間だけ事業を良くするのと、本質的なことを考えてコツコツやっていくというのは根本的に違うし、そういう大変なところから逃げていないというのは単純にすごいなって思いますね。

ーー今後グリーグループで実現していきたいことはありますか?

小竹:ゲーム・エンターテインメント領域で勝負しているので、グリーグループの資産を活用して世の中で話題となるものをつくることが大事だと思っています。今WFSが開発を進めている「Heaven Burns Red」は非常に夢のあるプロジェクトで、当たればとてつもなく大きなものになると期待していて、これ以外にも複数のプロジェクトを進めながら、再びゲーム・エンターテインメント業界の中心地を目指したい。先日「Heaven Burns Red」の開発メンバーの一人と話したんですが、「実はこのプロジェクトに入るか結構悩んだけれど、作品のポテンシャルとかを考えたらやるべきだって強く思ったんです」って言ってくれたんです。クリエイターってその人なりの旬があって、一方で1つの開発に携わると運用も入れて2年、3年は関わることになるから、次のプロジェクトに行くまで5年とかかかることもある。だから何個も選べないし、そのなかの1本が本当にこれでいいのかというのはすごく考えたそうなんです。でもそういう覚悟を持ってやってくれているというのはすごく嬉しいし、そういうメンバーがグリーグループにはたくさんいるからこそ、この人たちとなら次の山を目指していける、そう思っています。

ーー小竹さん、本日はありがとうございました!