旅行、グルメ、イベントなどのおでかけ情報を発信するメディア「aumo」を運営するアウモ株式会社(以下、アウモ)。500万ユーザーを超えるスマホゲームアプリ「SINoALICEーシノアリスー」など、人気ゲームを数々手がける株式会社ポケラボ(以下、ポケラボ)。
この2社は、現在ブログメディアやSNSなどさまざまなチャネルを用いて、積極的な採用広報活動に取り組んでいます。各業界で採用難が叫ばれる昨今、アウモとポケラボは、採用広報でどのようなメッセージを発信しているのでしょうか。そこで今回は2社で人事を担当するお二人に、いま採用広報に注力する背景や意義、そこに込めた想いについて語り合っていただきました。
山口:アウモ株式会社 メディア事業本部 メディア人事チーム
美容師など複数の業種を経て、2018年3月にアウモ株式会社にジョイン。以来、人事領域を担当し、人材採用や採用広報、社外向けイベントの企画運営など多岐にわたる業務を手がけている。
藤岡:株式会社ポケラボ コーポレート 人事チーム
求人広告の運営企業に新卒入社し、法人営業を経験したのち、2013年にポケラボにジョイン。採用広報をメインに、採用担当・社長秘書も兼務している。
「ありきたりな内容じゃ埋もれる!!」と危機感を感じた
ーーはじめに、お二人が採用広報に積極的に取り組む背景について教えてください。
藤岡:実はポケラボは数年前までゲームの開発に注力していて、採用活動をほぼ行っていない期間がありました。ですが「SINoALICEーシノアリスー」や「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED」など、のちにポケラボの看板タイトルになる作品がリリースされて事業全体が成長拡大していくなかで、人材獲得の重要性が急速に高まり、採用を本格化することになりました。とはいえ、数年間の“休眠期間”があったので採用市場での知名度は低いですし、ゲーム業界全体でも開発期間の長期化から転職しにくい状況があるので、特に即戦力となっていただけるような方の採用は難易度があがっています。そこでまずはポケラボという会社を知ってもらいつつ、候補者の方に「この会社で働いてみたいな」と思ってもらう手段として採用広報に取り組むことになりました。
山口:私は2018年にアウモにジョインしてから、しばらくして採用広報を担当するようになったのですが、当初は採用広報によくある形式の記事を書いていて、特に独自性を出せてはいませんでした。でも、参考のために他社さんの記事を読むようになって、大きく意識が変わりました。さまざまな企業がユニークな手法で情報発信をしていて「ありきたりな内容じゃ絶対埋もれる!!」と (笑)。
それからは表面的な情報発信ではなく、社内でのおもしろエピソードなど、転職市場の顕在層以外にも届くような記事を作って、より多くの方の興味を惹く採用広報を目指すようになりました。
藤岡:「顕在層以外にも届く」というのは大事ですよね。多くのエントリーを集めるためには「いま転職したい人を惹きつける」も大切ですが、「将来転職するかもしれない人に会社を認知してもらう」ことも必要だと思います。なので、ポケラボでも顕在層以外にも、幅広く届けられるように意識して取り組んでいます。アウモは、採用広報にどの媒体を使っていますか?
山口:Wantedlyを使っています。2018年の年末から始めて約1年間、定期的に記事を更新しています。あと「aumo」のTwitter公式アカウントでaumoアプリに関するキャンペーン情報などを発信しているのですが、社員個人のTwitterアカウントでも情報拡散をしてくれていたりします。こういう企画はもちろん採用を目的にはしていないんですが、第三者の方にとってはaumoへの親近感を醸成できていたり、サービス内容を多くの方に知ってもらう機会になったりもしているので直接的ではなくても結果として採用に役立っていると思います。
藤岡:ポケラボは2018年の夏頃からWantedlyで、スタッフのインタビューや、社内のスキルアップ施策を行う記事など求人票やコーポレートサイトでは伝えきれない、社内の雰囲気や、社員の想いを発信しています。最近ではWantedlyとは異なる層に認知を広げたいと思っていて、noteにも記事を展開するようになりました。
山口:ポケラボは広報用のTwitterアカウントもありますよね?
藤岡:ポケロボくんのアカウントですね。このアカウントは採用広報の記事と社外の方を招いて行うミートアップの様子を発信・拡散する場所として使っています。ポケロボくんはポケラボの公式キャラクターなんですけど、見た目がかわいいので、広報にすごく役立ってくれています。ポケロボくんの画像はよくリツイートされますし、社外の方にもすごく親近感を持ってもらえています。ポケロボくんとは二人三脚でポケラボをより多くの方に知っていただけるように日々奮闘しています(笑)。
「ありのまま」を書いても、ネガティブな反応はなかった
ーー採用広報の記事を書く際に、特に気をつけていることはありますか?
山口:綺麗すぎる記事にならないように気をつけています。採用の候補者さんの側に立ってみたときに、やはり表面的な情報ってそれほど参考にならないんですよね。それに私としても、ただ沢山エントリーが集まればいいとも思っていません。大事なのはアウモと候補者さんが共感し合って、その結果としてご入社に至ると思うので、記事のなかでも会社のリアルな部分を届けられるように努力しています。
藤岡:私も同じで「ポケラボのありのまま」を伝えることが大切だと思っています。社員インタビューの中でも、会社に対して、個々人が魅力に感じているところを引き出すのはもちろんですが、課題に思っているところも出来るだけ包み隠さず書くようにしています。
ーー「ありのまま」を書くことに、社内からネガティブな反応はないのでしょうか?
藤岡:それが全くないんですよ(笑) 。「この情報はNGです」と言われたことすらなくて。それよりも「ありのまま」を書くことによる手応えの方が大きいですね。面接を受けた候補者の方からも「包み隠さず社内の雰囲気を発信していることに好感を持ちました」という反応もいただいています。
山口:アウモも同じで、社内はすごく協力的です。私は「社内スタッフの失敗談」とかラフな内容の記事も発信したりするんですが、仕事でも失敗を受け入れて成功に繋げようとする文化があるからか、そのような記事もみんなすごく楽しんでくれていて、なかには個人のSNSアカウントで記事を拡散してくれるメンバーもいます。
藤岡:SNSでのシェアは本当に助かりますよね。
山口:本当にそうですね。アウモはメディア企業ということもあって、SNSへの関心度が高く、そこでさまざまな情報を得たり発信したりしているスタッフが多いです。なので、私としては社外の方だけじゃなくて、社内やグループ内の方がシェアしたくなるような記事をつくることも心がけていますね。
藤岡:そういった記事をつくるために、なにか勉強されていることってありますか?
山口:特別に勉強していることはないんですが、日頃から「ことば」に対してアンテナを張るようにしていますね。たとえばブログを読むにしても、文字の大きさや、フォント、改行の幅、文章の構成とかに気を配って「おもしろい記事って何でおもしろいんだろう?」と自分なりに考えて、そこで立てた仮説をもとに記事を書いています。最近はプライベートでYouTubeを観てるときも、気がつくと「このテロップ、自分だったらこうするな」と改善案を考えていますね(笑) 。藤岡さんはなにか勉強されていることはありますか?
藤岡:私は会社の教育予算を使って、キャリアスクールのライターコースを受講したりしています。そこで文章の基本や、インタビューの方法など勉強中です。あと、私はもともとブログを読むのが趣味で、暇さえあればいろんな人の記事を読んでいたんですが、その経験が採用広報にも生かせている部分もあるかもしれません。
アウモの強みは「多様性」。実は私も…
ーー採用広報で最もアピールしたいことはなんでしょうか。
山口:いろいろあるんですが、一番伝えたいのはアウモの「多様性」ですね。アウモにはとにかく、いろんな経歴の、いろんなスキルを持ったスタッフが所属していて、しかもそんなスタッフがお互いのことを尊重し合うカルチャーがあります。
藤岡:たしかにアウモにはインターン生も多くて、いろんな方が集っている印象がありますね。普段働くなかで「多様性」を実感することってありますか?
山口:私は採用する立場なので、特に実感するシーンが多いですね。面接でもさまざまな経歴の方と出会いますし、他社に新卒入社することになったインターン生が数年後に戻ってくるとか、多くの人に開かれた会社だということは日々実感します。あと、実は私自身、もともとは美容師をしていたんですけど…。
藤岡:山口さんも「多様」な人のひとりなんですね。
山口:まさにそうです(笑) 。私がジョインしたときも、当時の採用担当の方は前職や職歴にはそれほどこだわらず、私の価値観や、これまでになにを大切にしてきたかという点に重きを置いて、対話形式で面接をしてくれました。そういう採用への姿勢が、アウモの「多様性」の土台を形成しているかもしれないですね。
藤岡:なるほど。私も採用広報では、自社ならではのカルチャーをアピールしたいと思っていますね。
山口:「ポケラボならではのカルチャー」というと?
藤岡:まずは「大手とベンチャーのいいとこ取り」ができているところは、大きな魅力だと思います。ポケラボはグリーグループとして安定した基盤があるのはもちろんですが、グループ参加以前のベンチャー時代の気質も残っていて、意思決定のスピードも早いですし、役職や職種関係なく、かなりフラットに意見交換ができる環境で仕事をしています。それは社内体制にも表れていて、入社数ヶ月で看板タイトルのPMに就任したメンバーもいたりして、役職や社歴、年齢関係なく、軸をしっかりともっていたり、ドライブ感を持って取り組める人が活躍できる環境があります。
山口:それは候補者の方にとっても、魅力的なバランスですよね。
藤岡:本当にそう思います。あと、これは代表の前田の口癖でもあるのですが「ウチにはいいやつが多い」と(笑)。私自身も日々みなさんと接する中でそう感じることが本当に多いので、そういう「人」の魅力もアピールしたいですね。最近つくった「好きだから、創り続ける」という採用広報のキーメッセージのベースにもなっているのですが、ポケラボには「とにかくゲームが好き!アニメが好き!エンタメコンテンツが好き!」という、仕事に対して熱量が高く、また人ときちんと向き合える社員が多いんですね。そういう志を同じくする仲間と、一丸となってファンの方の期待を超えられるようなゲームを創り続けよう!という部分は採用広報で伝えたいことですね。
これまでで一番気に入っている記事は・・・
ーーこれまで発信した記事の中でお気に入りのものを教えてください。
藤岡:ひとつだけ選ぶのはすごく難しいです。社員インタビューの記事は、全員「本当に最高だな…」と思いながら書いていますし。クリエイティブ部が主体的に発信してくれている「CreativeBlog」も捨てがたいです…。
山口:私も社員のインタビュー記事や開発秘話の記事とか、お気に入りは多いですね。
藤岡:あえてひとつだけ選ぶとすれば…、一昨年の忘年会の様子を記事にした「オモシロケレバナンデモヤル -それは最高の『ポケラボ大忘年会』-」という記事ですかね。人事部長の丸野が酔っ払ってうなだれている姿がヘッダー画像の記事なんですが、この写真の社外公開を上司がOKしてくれるところに、「面白いことに全力で取り組む」というポケラボの社風が表れている気がしてお気に入りです。この年の忘年会では、多忙なマネージャー陣が忘年会のかなり前からこのためだけにハンドベルの練習に取り組んだり、代表の前田の実家に突撃インタビューしにいったり、記事内容でもその社風を存分に感じていただけるとのではと思います。
山口:そういう点でいうと、私は「『スナック アウモ』OPENしました。遊びも全力すぎるこの会社に結構ビビってます。-」という記事を推したいですね。アウモは最近組織も大きくなって、所属部署間の関わりは深いものの、以前と比べ他部署メンバー同士はコミュニケーション頻度がどうしても限られてきていました。そこでチームビルディングの一環として、お酒が好きなスタッフ同士が「スナック アウモ」という取り組みをするようになりました。社内にいる社員やインターン生、業務委託のスタッフもまぜこぜで、お酒を飲みながらフラットに語り合うイベントなんですが、スタッフ同士がすごく楽しんでいて、部署同士が尊重し合ってみんなで一つの最高のサービスづくりをしているアウモの雰囲気を伝えるのにぴったりの記事だと思います。
藤岡:採用広報は認知を広げることも重要ですが、求人票等の情報では伝えきれない会社の文化や雰囲気といった非言語情報を発信することで、カルチャーマッチという観点で、入社後に「この会社なんとなく合わないかも」といったミスマッチを防ぐこともできますね。
山口:そう思います。外側からだと、企業の内側は思った以上に見えにくいんですよね。それは候補者の方にとってすごく不安なことだと思いますし、その企業でどんな人が働いていて、どんな仕事があって、どんな働き方をしているのかを知らせるためにも、採用広報の役割は大きいと思います。
藤岡:山口さん、今日は貴重なお話ありがとうございました。
山口:こちらこそどうもありがとうございました!
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