国際会議に研究論文が採択されたグリー社員にインタビューをしました。

インナーコミュニケーションチームです。
グリー開発本部の尾崎さんが筆頭著者となる論文が「The Genetic and Evolutionary Computation Conference (以下、GECCO)」にフルペーパーとして採択されたプレスリリースが発表されました。
今回のブログでは、見事論文が採択された尾崎さんに日頃の研究の様子や想いについて伺いました。

※写真は過去に撮影されたものです。


尾崎

尾崎:グリー株式会社 開発本部 データテクノロジーグループ AIリサーチチーム

2017年グリーに新卒入社。モバイルゲームの開発を経て、機械学習エンジニアとして画像認識システムの開発に従事。ブラックボックス最適化やAutoML(Automated Machine Learning)の研究に取り組み、国際会議への参加や学会発表、論文執筆を行う。

ーーこの度は、GECCOでの論文の採択おめでとうございます!!


尾崎

尾崎:ありがとうございます。

ーー今回GECCOに参加することになった経緯を教えてください。


尾崎

尾崎:私の今回の論文の研究テーマは、効率的な多目的最適化アルゴリズムの開発です。
この多目的最適化というトピックの研究に最も熱心に取り組んでいる人達が所属しているのが、進化計算のコミュニティです。GECCOは進化計算分野の最大の国際会議で、今回の論文に非常にマッチしていると思ったので、論文の投稿先に選びました。

ーーグリーでは、2018年より国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センターに社員が出向し、AI関連プロジェクトにおける研究を行っています。尾崎さんはその出向メンバーですが、どのような活動を日頃行なっているのでしょうか。


尾崎

尾崎:基本的に、とても自由かつ主体的にやらせてもらっています。
自分の興味関心と分野の動向を照らし合わせ、チームメンバーと議論しながら、向こう数ヶ月から1年単位で取り組む研究テーマを都度選定します。
その後、各研究テーマについて、サーベイ、提案手法のアイデア出し、実装、計算実験、原稿執筆などを一通り行い、投稿に漕ぎ着けます。
論文が無事アクセプトされれば、今回のGECCOのように学会に参加し、研究内容の発表を行うこともあります。

ーー今回論文を書くにあたり、日頃書かれている論文と異なることや課題はありましたか。


尾崎

尾崎:多目的最適化の論文を書くのは初めてだったので、個人的には慣れているトピックよりもサーベイが多く必要でした。共著者が多目的最適化の専門家だったおかげで、適切な実験設定などをスムーズに考えることができ、課題を上手く乗り越えることができました。

ーー日頃より、学会や国際会議等に出席されていると思いますが、今回のGECCOは特別なものでしたか?


尾崎

尾崎:“特別”の意味合いによりますが、個人的には、GECCOに投稿したのも、多目的最適化の論文を書いたのも初めてだったので、論文を通すことができたことは大きな収穫です。国際会議としては、昨夏に参加した機械学習分野のICMLやKDDとそれほど大きく変わらないものだと思っています。
ただし、今年はコロナウイルスの影響で全てが前例のないバーチャル会議となるため、誰にとってもやや特別な状況かもしれません。

ーーグリーの一社員が研究センターで業務する上で、困難だったこと、またよかったと思えたことは?


尾崎

尾崎:困難は特に感じていません。よかったと思えることは、人と研究設備に恵まれていることです。
研究所には、自分と関連する研究テーマに取り組んでいる人が数多くいるので、ディスカッションや共同研究がとてもしやすいです。加えて、周囲にトップ会議やトップジャーナルの採択を目指して研究している人がいると、自身のモチベーションもコントロールしやすいです。また、GPUの搭載されたワークステーションやABCI(クラウド)等も気軽に利用できるので、計算資源に困ったこともありません。

ーー一見業務と関係がないように思われますが、日頃研究していることをどのようにグリーで生かしたいと思っていますか。


尾崎

尾崎:自分の研究内容自体を直接的に会社で活用することには固執していません。
国立の研究所に出向していることもあり、研究テーマ選定の時点で、会社の個別事業を意識しているというよりは、汎用的に応用のありそうな研究テーマに取り組んでいます。

ーー新卒でグリーに入られてから、研究している期間の方が事業に携わるより長いかと思います。キャリアについては、早い段階から考えられていたのでしょうか。


尾崎

尾崎:学生時代は修士2年目の冬頃になってようやく研究成果が出て楽しくなってきたという状況だったのですが、その春に就職をしてしまったので、機会があればまた研究をしてみたい気持ちがありました。
入社後早々に、世間全体で企業におけるAI関連分野の研究開発が活発化した背景や、人工知能研究センターに企業からの出向ポジションがあり誘いを受けたことなど、その機会に恵まれたことはとても運が良かったと思っています。

ーー最後に今後の目標について教えてください。


尾崎

尾崎:この研究は、ベンチマーク問題を解くことや論文を会議に通すことがゴールではありません。今後の目標としては、まず提案手法を用いて実問題の解決に挑戦すること、また、提案手法を世の中で使ってもらうために使いやすいソフトウェアの形にする、といった展開を考えています。

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