2007年の創業以降、モバイルゲームの開発と運用に特化して成長を続けてきた株式会社ポケラボ。昨日リリースした「アサルトリリィ Last Bullet」など、人気IP(※1)から数々のヒットゲームを生み出しています。
IPを愛するファンの期待に応えるゲームを提供するために、ポケラボのクリエイティブチームが行っている取り組みについて聞きました。
三浦:株式会社ポケラボ ゲーム事業本部 クリエイティブ部 部長
前職でゲーム開発のグラフィックデザイナーなどを経て、2012年にポケラボ入社。ポケラボ では複数タイトルのアートディレクターやメインキャラクターデザインを担当。直近では「SINoALICE ーシノアリスー」のアートディレクターを担当し、現在はクリエイティブ部部長としてポケラボのクリエイティブに関わる各機能チームの統括を行う。趣味は知らない土地を散策すること。
下澤:株式会社ポケラボ ゲーム事業本部 クリエイティブ部 アートグループ シニアマネージャー
前職でコンシューマーの開発会社、オンラインゲームの開発会社を経て、2015年にポケラボ入社。入社後は複数タイトルの3Dモデリングやアニメーションを担当。直近では「SINoALICE ーシノアリスー」、「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED」のアニメーションを担当し、現在はアートグループシニアマネージャーとしてアートに関わる各チームの統括を行う。趣味は釣りや自転車、工作、買い物など多趣味に色々やってみること。
ゲームタイトルを横断してクリエイティブに関わる独自のチーム体制
ーーポケラボでは複数のゲームタイトルを開発されていますが、そのアート制作を担うクリエイティブ部はどのようなチーム体制なのでしょうか。
三浦:クリエイティブ部は基本的にひとまとめのチームで、メンバーの多くはそれぞれ一つのゲームタイトルへ固定せず横断的に制作へと関わっています。
下澤:アートディレクターや進行管理が所属するアート制作マネジメントチームなどは固定タイトルを担当しますが、他のチームは、昨日は「SINoALICE ーシノアリスー」のモーション作成、今日は「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED」の演出...と、頭の切り替えが必要になります。
ーータイトルを横断して関わっていると混乱しそうですが、この体制はどのようなメリットがありますか?
下澤:切り替えは大変ですが、各プロダクトで違う技術やツールの使い方を幅広く学べるので、異動などの際に新たな知識や技術をキャッチアップする負荷が軽くなります。新しく入社したメンバーがスキルアップして活躍できるまでのスパンも短いと感じています。常に変化があり、飽きない環境でもありますね。
三浦:ワンチームになることでコミュニケーションや連携が強くなり、苦しいポイントを助け合い、補い合って、お互いを手厚くサポートできていると思います。ただ、ゲームタイトルを横断することでキャッチアップが弱まる部分もあるので、クリエイティブ部のIPに対する理解を強化したいという考えがありました。
ーーなるほど。IP理解が重要だという意識は、どのようにして社内へ浸透していったのでしょうか。
三浦:私が部長就任時に、クリエイティブ部の目指す姿を弊社代表の前田と何度も話し合って「驚きが連鎖するクリエイティブ」というスローガンを作りました。「驚き」というのは、ゲーム内の意外な仕掛けもそうですが、ユーザーさまの予想を超え「こういうのを待っていた」という感動を届けるのも要素の一つだと思っています。そうした「驚き」で次の作品への期待を呼び起こし、期待にまた新たな「驚き」で応える、という連鎖を起こせるようなクリエイティブを理想として掲げています。
下澤:美しいビジュアルや綺麗なイラストだけではなく、IPを扱う以上、ユーザーさまが何を求めているのかを深く理解することにアドバンテージがあると思っていて、その上で、自分たちのこだわりを届けることが期待値を上回る結果に繋がります。スローガンをIP理解の側面から分解するとともに文章化してクリエイティブ部全体に共有し、IP理解の必要性を伝えてから取り組みを模索し始めました。
IP研究をにぎやかな新聞やクイズに展開。楽しみながら理解を深める
ーー具体的に、現在はどのようなIP理解の強化に向けた取り組みを行っていますか?
下澤:2020年に入ってから、3つの取り組みが定着しました。一つは、各プロダクトの資料や設定をまとめ、使いやすくして共有する「資料まとめプロジェクト」の発足。資料整理だけではなく、アニメなどの映像作品からエフェクトの傾向をまとめるなどのプロダクト研究も行っています。
また、週に一回「クイズプロジェクト」が主導して、自社の携わるプロダクトに関するIPクイズ大会を行うようになりました。点数や正答率を競い合うものではなく、ワイワイと答える気軽な雰囲気で実施していますが、回答するために各自がIPについて深掘りして調べたり、出題に補足や豆知識が寄せられたりと、クイズに関わることで理解を深めることを目的としています。
さらに「IP新聞プロジェクト」が月に一回「IP新聞」を発行しています。プロダクトのIPに関する情報のほか、SNSでの反応やユーザーさまの声を収集して掲載しています。
三浦:資料が新聞やクイズにも展開されるなど、それぞれのチームが連携して盛んに交流しています。「IP新聞」にはユーザーさまの好意的な声はもちろん、要望や厳しい感想なども載せて改善に生かしています。当初クリエイティブ部のアートグループ内だけで共有されていたのですが、IP理解はプロダクトに関わる全員に必要なので、今ではポケラボ全社に公開しています。制作メンバーにはプレッシャーかもしれませんが(笑)。
ーーそれぞれボリュームのある内容ですが、マネジメントで指揮をとっているのでしょうか。
下澤:誰かの指揮ではなく、クリエイティブ部のメンバー各々が主体的に動いてくれています。IP理解の必要性はマネジメントから示しましたが、それぞれの取り組みはMBOという目標設定の一環として自発的に発案され、自然に形ができていきました。メンバーは業務の合間などに取り組みに関する作業を行うので、楽しんでできることに重きを置き、マネジメントは作業の重複がないように目を配り、なるべくメンバーの負担にならないようにしています。
「IP理解強化への取り組み」メンバーのこだわり
IP理解プロジェクトを主導するメンバーからも声をもらいました。
資料まとめプロジェクト 佐々木:
ゲームタイトルごとにキャラクターやストーリー、デザインなどの設定をまとめ、制作に必要なものや過去の成果物を確認できるリンク集を作成し、初めて担当するIPでもすぐに簡単な知識を得られるようにしています。当初はアートチームだけで展開していましたが、今では他部署でも活用されていて、「役に立った!」という声を聞くとメンバー一同嬉しく思っています。この資料があることで少しでも皆さんの工数が軽減し、「こだわりを届ける」ために注力する時間が増えたらいいなという思いで、より便利な資料作りを目指していきます。
クイズプロジェクト 小寺:
メンバーそれぞれ、IP理解への意欲はあれど、「何を知れば良いかの取っ掛かりが分からない」という声もあり、気軽に楽しく学べないものかとクイズ形式で実施しています。問題の難易度設定が難しいのですが、「IP理解に紐付けられるか」を意識しながら、調べればわかるトピックを選定しています。そこに解答発表時の解説を加えて、必ず+αの知識を皆さんに届けています。ゲーム制作に欠かせない、「エンタメ心を忘れない」ということを意識しながら、周囲も自分たちも楽しめるよう、クイズ制作を続けていきます。一緒に行うメンバーも募集中です!
IP新聞プロジェクト 窪田:
ユーザーさまやファンの方々の声を集め、メンバーがそれに触れるきっかけづくりを目的に制作しています。楽しんで読んでもらえるよう新聞の形式を採用し、描き下ろしイラストや画像を多く掲載したり、催しものコーナーを設けたりなど、飽きないための要素を詰め込んでいます。制作する中で、自分たちもファンの方々の熱量に驚くことも多く、読んだメンバーからのポジティブなフィードバックも日々のモチベーションにつながっています。今後も皆さんのやる気に繋がるような発信をし続けていきたいです。
お客さまに喜んでもらうために自分たちも楽しみ、良いサイクルを作る
ーーIP理解の取り組みがプロダクトや組織に生かされていると感じられた事例はありますか?
下澤:「アサルトリリィ Last Bullet」でチャーム(武器)のオリジナルデザインを作成して発表した際、SNSなどで「こだわりがすごい、もはや変態的」「他社の名作と比べても遜色ない」という反響がありました。社内のメンバーが頭をパンクさせるほど悩み抜いたから生み出せたデザインですが、IP理解で挙げた「何が求められているかを理解した上で、自分たちのこだわりを届ける」という課題をクリアし、ファンの方々の期待以上のものが出せた例です。
三浦:「アサルトリリィ」の舞台公演があった際に、クリエイティブ部のメンバーがキャラクターを演じる演者さんへ毎日のように応援のイラストを送ったことがありました。演者さんは喜んでSNSに掲載してくださり、また反響が連鎖してお互いに嬉しい結果になりました。こうしたことが自然に起こるのは、現在のチームがIP理解を進めて、純粋に舞台を応援しようと動ける「IP愛」まで深めてくれたおかげだと思います。
ーーポケラボのクリエイティブ部が今後目指す組織の姿はどのようなものでしょうか。
三浦:やはり、期待するのは「驚きの連鎖」です。IP理解ができている100点の状態を当たり前にして、さらに培ってきた技術や知見を生かし、110点120点が出せる組織になることを目指しています。
下澤:今はタイトル既存のファンの方々の期待に応え、超えていくのを目標にしていますが、ポケラボのIPへの愛やアートが加わることによって、新しいファンを獲得したいと考えています。
三浦:私は、それぞれのチームや一人ひとりのメンバーが意識して楽しんで行動できる状態のとき、最も良いパフォーマンスが出ると考えています。中心部の心臓だけが活発なのではなく、指先一本一本まで血が通った組織を目指し、良いものを作って、最終的にスローガンを達成したいと思います。
ーーありがとうございました!