【特集】なぜ「魂の交渉屋とボクの物語 - Soul Negotiator -」が東京都で初めての推奨アプリに認定されたのか? 都民の安全を守る坪原さんにお話を伺いました

こんにちは、社会貢献チームの伴です。
東京都では、東京都青少年健全育成条例の改正により、インターネット利用に伴う危険から青少年を守るために有益なスマホアプリなどを推奨する制度を設けています。今回、グリーがインターネットリテラシーの啓発のために制作した「魂の交渉屋とボクの物語 - Soul Negotiator -」(通称:たまボク)が、東京都で初めての推奨アプリに認定されたことを受け、アプリの選定に携わった東京都 都民安全推進課長の坪原さんにお話をうかがいました。青少年のインターネット利用を取り巻く現状やアプリ推奨制度を設置した経緯、「たまボク」への期待について語っていただきました。


坪原 和洋さん

坪原 和洋さん

東京都 都民安全推進本部 総合推進部都民安全推進課長

【都民安全推進課の事業】
 地域の防犯力を高め、誰もが犯罪にあうことなく安全で安心して暮らすことができる東京の実現を目指し、区市町村、事業者、都民と連携して、防犯カメラの設置補助、再犯防止の推進、防犯ボランティアの育成・支援、ネット上での被害・トラブルの防止対策、滞在・在留外国人の支援など総合的な安全安心施策を行っている。


都民安全推進課長の坪原さん

インターネットにおける青少年の安全安心を守るために

ーー青少年のインターネット利用に関して、東京都はどのような取り組みを行っていますか?


坪原さん

東京都では、都民の皆さまの安全安心を守るためのさまざまな活動を行っています。そのなかで喫緊の課題の一つとなっているのが、サイバー空間における安全安心をいかに実現するかです。具体的な施策として、近年増加している「自画撮り被害」の防止に向けては、青少年健全育成条例の改正により18歳未満の子どもに裸の画像を送るよう不当に要求する行為等を罰則付きで禁止しました。また、子どもが有害なサイトや危険な情報を閲覧しないよう通信事業者と連携してフィルタリングの普及を図ったり、学校や企業を回ってインターネットリテラシーに関する講演を年間600回開催したりと多様な取り組みをしています。
このほか、インターネットやスマホでのトラブルに巻き込まれてしまった場合や警察に相談すべきか迷う際などの相談窓口として「こたエール」を設置しており、青少年だけでなく保護者や学校関係者の方からの相談も受け付けています。


ーー相談窓口に寄せられる問い合わせには、どんなものがありますか?


坪原さん

最近多くなっているのが、インターネットで知り合った相手との交際に関するお問い合わせです。SNSなどを介して知らない人とやり取りをし、親密になっていくうちに「個人情報が分かるものを送ってほしい」「裸の画像を交換しよう」といった要求をされ、どうすればいいか判断がつかず相談をいただくケースが増えています。社会に出てさまざまな経験を積んだ大人であればすぐに怪しいと気付くことができても、まだ成長過程にいる子どもはこうした危険に気付きにくく、人を疑うことにも慣れていないものです。警戒心が薄いという点を利用して悪事を働こうとする人がいるということを、本人が認識するのはもちろん大人たちからもきちんと教えていく必要があります。
また、インターネットゲームでの過度の課金で請求金額が膨れ上がってしまった、長時間利用で日常生活に支障が出ているという相談も多くあります。こうした事態を防ぐには、適切に利用するためのルールについて家族でよく話し合っておくことや、学校や企業など社会全体で協力しながら、ゲームやSNSと適切に付き合うことを学んでいける環境をつくっていくことが大事だと考えています。

ゲームを楽しみながら正しい知識を身に着けてほしい

ーー「魂の交渉屋とボクの物語 - Soul Negotiator -」(以下、「たまボク」)が東京都で初めての推奨アプリに認定されました。なぜスマホアプリなどを推奨する制度を設けるに至ったのか経緯をお聞かせください。


坪原さん

成長過程の子どもを騙そうとする大人たちを厳しく取り締まることも重要ですが、日頃からの普及啓発を通じてトラブルを被害が生じる前に防ぐことが何よりも重要であると考えています。そのため、最近では小学生の3割がスマートフォンを持っているというデータがあることから、青少年のスマホ利用率が高いことに着目し、スマホアプリを通じて安全な使い方の知識を身に着けてもらうことで自画撮りなどの被害を防ぐべく今回の推奨制度設置に至りました。
スマホは確かに便利なものですが、写真や動画を撮影してインターネット上で共有するといった何気ない行為でも、思わぬ落とし穴があることも事実です。インターネットの世界は広く、保護者や大人の目が行き届かない部分があるからこそ、子どもたち自身にインターネットやスマホの安全な使い方を学んでもらうとともに、インターネットの発展とともに育った世代の私たち大人世代も含めて一緒に学んでいく必要があると考えています。


ーー「たまボク」に対する印象や、推奨アプリとして選定した理由を教えてください。


坪原さん

イラストのタッチが良い意味で啓発アプリらしくなく、初めて目にした時は普通のゲームと変わらないように感じました。「たまボク」はネット利用時におけるトラブル事例をもとにゲーム感覚でネットリテラシーを学べるという内容ですが、実際にプレイしてみて驚いたのが、主人公とクラスメイトからなるキャラクターたちの心情の変化や学校を中心とする各シーンの描き方が非常にリアルであることです。不適切投稿、児童ポルノ、アカウント乗っ取りなど幅広いテーマのストーリーを通じてさまざまなトラブルを疑似体験でき、自分がゲームの中に入っているような感覚を覚えました。
1つのストーリーのなかでさまざまな選択肢が提示され、自分の選択によって物語の展開が変わっていくので、誤った選択をしてしまった時にどんなことが起きるのかを見ることができるのも非常に勉強になると思います。ストーリーをクリアするごとにミニテストがあるので復習ができるのもいいですね。自分が子どもだったら夢中で遊んでいたと思いますし、大人も楽しみながら勉強することができます。こうした点から職員たちの支持も非常に高く、審査委員会の先生方にも「プレイするなかで自然と知識を身に着けることができるのでは」と非常に好評でした。

より良いインターネット社会をつくるために行政と民間企業が一体となり取り組んでいく

ーーグリーは全国の学校、企業に向けて「正しく怖がるインターネット」と題した情報モラル講演を開催していますが、民間企業におけるこうした取り組みについてはどのように評価されますか?


坪原さん

道路や鉄道、ガス、電気といった社会インフラと呼ばれるものはこれまで、国や行政が主導してつくってきました。しかしインターネット空間の秩序については、その発展に貢献されてきた民間企業にこそ多くの知見があり、我々はむしろ勉強させていただくことが多くあります。インターネット、ゲーム業界で確固たる地位を築かれているグリーさんのような企業がこうした活動に主体的に取り組まれているというのは、非常に意義あることではないでしょうか。利用者の安全安心を守るというのは本来我々の役目ではありますが、インターネットは他のインフラ以上に行政と民間とが力を合わせていく必要があると感じていますし、啓発活動についてもぜひ一緒に進めていければと思っています。
企業さんが新たなサービスを開発され、それをユーザーさんに安心して使っていただくためには、リスクや弊害を最小限に抑えるための対策も必要でしょう。そのために我々にできることがあれば喜んで協力させていただきたいと考えていますし、官民の垣根を越えた議論やアイデア交換を通じて、より良いインターネット社会をともにつくっていくことができたらと思っています。

ーー最後に、読者の皆さんに向けてメッセージをお願いします。


坪原さん

インターネットはとても便利な反面、自画撮り被害や気軽に投稿した内容の炎上などの子どものちょっとした過ちが取り返しのつかないことになってしまうことがあります。親子ともに勉強をしなければならない大変な時代です。大事なのは「大丈夫だろう」と過信・放任することなく、「もしかしたら」という危機感を持っていただくことです。そして大事なお子さんに自分を大事にすることを実感させるとともに、かけがえのない自分を守るためには知識を身に着けていく必要があることについて、まず大人が知識を得て模範を示していただき、子どもと日々コミュニケーションをとっていただく必要があります。
東京都では今後も条例整備などを進めていくとともに、インターネットを利用するすべての方に安全な使い方の知識を身に着けていただくことにより、誰もが被害者にも加害者にもならない社会を目指していきたいと考えています。これからも啓発活動をはじめさまざまな取り組みを通じて、都民の皆さんの安全安心を守るために尽力していきます。


「自画撮り被害」防止啓発ポスターを紹介する坪原さん

本日はありがとうございました。

グリーでは、青少年が情報モラルを自ら学べる、そんな環境作りを目指して「たまボク」を制作しました。インターネットをより安心安全に楽しくご利用いただくために、これからも「たまボク」をはじめ、講演活動、教材配布などを通じ、情報モラルの向上を目指します。

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