グリーグループが追求し続ける全方位的サステナビリティの未来

ーサステナビリティのサイトがリニューアルオープンしましたー

グリーグループとして行ってきたCSR活動が、今年新たにサステナビリティ活動としてリニューアルされました。今までのCSRの取り組みから、事業の一部にSDGsの視点を取り入れた狙いやこれからの活動について、取締役の大矢と今回、リニューアルプロジェクトを担当した牛腸に、それぞれの視点で語ってもらいました。

大矢大矢:グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高財務責任者
1992年、監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)に入社。1999年ソフトバンク・インベストメント株式会社(現:SBI ホールディングス株式会社)に入社後、ヤフー株式会社などで役員を歴任。2018年9月、グリーの取締役に就任し、2019年10月より最高財務責任者。公認会計士。

牛腸牛腸:グリー株式会社 コーポレート本部 政策企画チーム
2009年にグリーに入社しパトロール部門に配属。その後、政策企画チームに異動し官公庁との窓口やCSR活動を担当。2017年から2年ほど内閣府へ転職したのち、2019年にグリーへ再入社。CSR活動を担当。

2012年より行われてきた3つの主軸を持つグリーのCSR活動

ーー今回、SDGsをもとにしたサステナビリティを策定しましたが、グリーは以前よりCSRに取り組んできましたよね。


大矢

大矢:SDGsやESGは現在グローバルで起こっている流れですが、その背景には、アメリカを中心とした「行きすぎた経済至上主義の揺り戻し」という面があると思います。投資家目線ではESG (Environment Social Governance)の観点が注目されており、機関投資家が株を買う際の重要な評価軸になってきています。社会的にはSDGsのゴールにどう取組んでいくかという視点が重要視されています。グリーとしては以前からCSRに取り組んでいましたが、今回これらをより世の中に伝わりやすい形にしたと思っています。


牛腸

牛腸:実際に、グリーが企業としてCSRに取り組み始めたのは2012年です。CSRを始めた当時、グリーでは次のような3つのテーマを設定しました。

■ インターネット産業の強化と発展
■ 企業市民として社会の発展に貢献
■ 安心安全なインターネット社会の構築

「インターネット産業の強化と発展」については、千葉大学教育学部と共同で行っている授業などが該当します。教育学部で学ぶ学生は卒業後、教師をはじめ、子どもの教育に関わる割合が高いので、彼らに教育現場でインターネットやゲームの技術を活用する手法を学んでもらい、将来的な教育の情報化に対応できる人材育成を目指す取り組みです。実際の授業では、グリーから人を派遣し、学生でもある程度のサービスが制作できるツールを用意して、それをもとにアプリやゲームなどを作ってもらっています。



千葉大学教育学部との共同授業でアバターを作る児童たち


ーー「企業市民として社会の発展に貢献」はどうでしょうか?


牛腸

牛腸:大きく2つあり、1つは大きな災害が起こったときに、グリーとして災害支援の場を用意し、ユーザーさんからの募金や災害支援の輪を広げるような活動です。もう1つは緑づくり、いわゆる緑化活動です。残念ながら、今は新型コロナウイルス感染症の影響で2年ほどできていませんが、社員に募集をかけて、都内の緑化活動や、里山の復興などに取り組んできました。


里山で行った緑化活動

ーー最後の「安心安全なインターネット社会の構築」はインターネットによるトラブルや犯罪などへの対応でしょうか?


牛腸

牛腸:グリーではもともと「インターネットを安心、安全に使っていただく」ということに力を入れていて、実際に全国の学校に出向いて、インターネットの上手な使い方などの啓発活動を続けてきました。学校では生徒同士でインターネット上のトラブルも起こっていて、先生方も悩んでおられます。そういった悩みの声を受け、先生方が授業で自ら情報リテラシー教育をできるよう、教材やアプリの提供も行ってきました。


急速に高まるSDGsの評価軸。そして、グリーとしての答え

ーーこれまでのCSRをSDGsに合わせた形でリニューアルしたきっかけについて教えてください。


大矢

大矢:2017年ごろから、投資家の投資基準にもESGを含める流れが出てきました。すでに当時からSDGsという言葉も出ていましたが、大きく流れが変わったのは2019年です。この年に開催されたG20大阪サミット前後に政府が積極的に広報し始め、一気に広まっていきました。

ーー出始めたころは、読み方すらわからないような感じでしたけど、あっという間に広まってきましたね。


大矢

大矢:ESGやSDGsという評価軸が出てきたことで、今までグリーが取り組んできた3つの活動もリニューアルすべきではという機運が高まってきました。といっても、SDGsの17目標の中にグリーですでに取り組んで来たことも多く、評価の視点も含めてテーマを再検討しました。今でこそ、SDGsはテレビで普通に目にする立ち位置になりましたが、検討を始めた当初は、世間的にはそれほどでもありませんでした。ところが、知らず知らずのうちにすごい勢いで周知され始め、今回のリニューアルはぴったりのタイミングとなりましたね。

ーー実際の策定はどのように行ったのでしょうか?


牛腸

牛腸:今までのテーマを引き継ぐ形で、最初にチーム内で案を出し、それから関係部署へヒアリングしていきました。これまでのCSRは、メッセージを受け取る相手として、サービスを使うユーザーをメインに想定していましたが、SDGsを意識したメッセージを出すのであれば、株主や投資家と関わっている部署の意見を聞く必要もあると感じ、多くの方にお声がけさせていただきコミュニケーションをとりましたね。関係部署の反応としても取り組みや見せ方について、積極的にアイデアをいただけることが多く嬉しかったです。

グリーグループのサステナビリティとしての新たな3つの考え方

ーーこれまでの3つのテーマだけでは足りないと思われたのはどんなところだったのでしょうか?


大矢

大矢:今回のリニューアルで新たに設定したテーマは次の3つですが、基本的にこれまでのものを引き継いでいます。



大矢

大矢:では何がこれまでと違うのかというと、当初のCSRで「インターネット産業の強化と発展」だったものは「インターネットによる社会課題の解決」となりました。グリーグループはIT技術によって成長し、活動を続けてきた企業です。「インターネットの力で社会課題を解決することでその恩恵を社会に還元する」という、より具体的なメッセージを掲げることで、目指す方向や意義をさらに伝わりやすくしました。

ーー「多様性」というキーワードが新たに加わっていますが、グリーグループの多様性とはどんなものでしょうか?


大矢

大矢:特例子会社のグリービジネスオペレーションズ(以下、GBO)がその一翼を担っています。GBOは障がい者の雇用を積極的に進めるとともに、彼らが活躍できる場として設立された会社です。社会貢献はもちろん、グリーグループの中で本当に価値ある仕事に育っているのが大きな特徴です。現在、GBOでは主に精神的な障がいを持っている方を採用しており、彼らの中にはコミュニケーションが苦手な方もいますが、総じて高い集中力や緻密な作業力などを兼ね備えています。そのため、法務に関する調査など、大量かつ細かいチェックが必要な仕事などで欠かすことのできない存在になっています。個性と強みを持ちながらグループ内で頼りにされていて、彼らも仕事そのものが本当に好きで、現場からのニーズに応えられていることをやりがいとしていますね。


ーー3つ目のテーマは以前のCSRと同じものですね。


牛腸

牛腸:やはり、インターネットの安心・安全というのは、企業としてブレてはいけない軸だと思っています。CSRを開始した2012年はまだスマートフォンの普及率も2割程度でしたが、今はほとんどの人がスマートフォンを持ち、子どもたちも使っています。便利なものである一方、凶器になる可能性もあり、特に子どもたちはトラブルの被害者にも加害者にもなるという、今まで以上に安心・安全が重要な時代になっています。私も子を持つ母親として、子どもとネット社会の向き合い方は常に気になっているところです。インターネットサービスを安心・安全に使っていただくための活動は、変わらず続けていきたいと考えています。

ステークホルダーも、社員も。全方位的な持続可能性の追求へ

ーーサステナビリティ、いわゆる持続可能性を打ち出すことは、企業から見るとどういうメリットがあるのでしょうか?


大矢

大矢:我々はインターネット企業としてさまざまなサービスを展開していますが、持続的に成長していくには、ユーザーやクライアントを含め、世の中や社会に配慮し、少しでもプラスになるよう貢献していく必要があります。また、本質的に商売は三方良しであるべきだということです。「売り手によし、買い手によし、世間によし」というこの姿勢は、儲けることだけでなく、相手の利益、さらには社会への貢献があってこそよい商売となるという考え方です。

ーーもともとやってきたところに、積極的にアピールしていく必要性が出てきたという感じですね。


大矢

大矢:ちゃんと自主的に情報を発信しないと「やってないのか?」と言われてしまう時代になりつつあるのかもしれません。一方ステークホルダーとしては、社内のスタッフも同じように大事です。社員とのWin-Winな関係づくりもまた、会社という組織を持続させる上で重要だと考えます。グリーグループは手当や制度など比較的よく整備されていて、実際に、育休を取得した人の復職率も非常に高いです。人生にはいろいろなライフイベントが発生しますが、会社の環境によって働くことをあきらめないといけない状態はなくしたいと考えています。

ーーアイデアと組み合わせさえあれば、いろんなことができますね。


大矢

大矢:会社を取り巻く状況も刻々と変わっていますが、サステナビリティについて会社としてのテーマを明確に打ち出すことは、社内の意識や認識を変える上でも重要だと思います。広く周知されることによって、それぞれがそれぞれの意識で動き始めるからです。


牛腸

牛腸:実際、打ち合わせの際に来訪されたお客さまにお出ししている水のボトルは、それまでペットボトルだったものを、総務の人たちからの提案で、紙のボトルに切り替えました。もちろんコスト面の問題もありますが、社員が自分ごととして考えられるようになれば、グループ内でいろいろなことができるようになります。


ーー最後に、これからの取り組みについて教えてください。


牛腸

牛腸:リニューアルによって、何か新しいことが始まるわけではありません。しかし、持続可能な社会に向けて、声を上げやすい環境づくりができたと思っています。また継続していく取り組みについても毎回同じことの繰り返しではなく、視点を変え、見せ方も考えながら続けていきたいと思っています。


大矢

大矢:社会的に求められるものは常に変わっていくと思いますが、サステナビリティとしてはお互いWin-Winであることが大事だと思いますので、それを念頭にできることをきっちり継続させていこうと思っています。

ーーありがとうございました!