投資事業を通じてグリーの価値を高め、インターネットの未来に貢献すること

2020年、スタートアップへの投資を行う子会社としてグリーベンチャーズ株式会社が設立されました。加えてグリーグループには、サンフランシスコを拠点にVRを含むBtoC関連のスタートアップに投資を行う子会社GFR Fund(以下、GFR)、日本・インド及び東南アジアのスタートアップへの投資を行うSTRIVE株式会社があります。今回はグリーグループにおける投資・インキュベーション事業(以下、投資事業)の位置づけやその意義、そして今後の展望などをグリーベンチャーズの相川さんと、GFRの筒井さんに聞きました。

相川相川:グリーベンチャーズ株式会社 代表取締役社長
2010年入社し、GREE Platformの立ち上げや大手企業とのアライアンス、官公庁との折衝を担当。その後2016年より社長室長として投資関連業務を担当。2020年より現職。

筒井筒井:GFR Fund, Managing Partner
2011年にグリーがアメリカのゲーム会社を買収した際に、投資銀行側でアドバイザーをしていたことをきっかけに入社。「アメリカで投資事業をしたい」という強い思いから、2014年より渡米し、シリコンバレーにてベンチャー投資を行う。今、注目している投資領域はメタバース、クリエイターエコノミー、ブロックチェーン/NFTなど。

紆余曲折しながらも、粘り強く続けてきたグリーの投資事業

ーーまず初めに、グリーグループには3つの投資事業を行う会社がありますよね。それぞれの違いや、役割について教えてください。


相川

相川:「STRIVE」「GFR」「グリーベンチャーズ」の3社はスタートアップへの投資を行うということと、グリーが100%出資する子会社であるという点は共通です。違いとしては地理的な担当エリアがあり、STRIVEは日本に加えて東南アジア・インド、GFRはアメリカ、グリーベンチャーズは日本を対象に投資をしています。またSTRIVEとGFRはグリーだけでなく、他の企業からもお金を預かってファンドの運営を行なっています。


筒井

筒井:GFRは2016年にはVR/AR領域に特化したファンドを立ち上げています。この領域にはグリーをはじめ、他のIT企業からも引き合いが多かったので、自分たちだけで囲い込むのではなく、“日本連合”のような形で、近い業界の企業と手を組み、協力しながらやっていこうという背景で他の企業からお金を預かってファンドを運営しています。

ーー筒井さんはどのような経緯でグリーの投資事業に関わってきたのですか?


筒井

筒井:グリーの投資事業にはちょっとした歴史があります。私が入社した2011年ころはプラットフォーム事業が急速に成長をしていたタイミングで、社内だけで20人ほどのメンバーが事業シナジーを目的に国内外で積極的に投資をしていました。その後、2013年前後から事業フォーカスの見直しを進め、投資活動の規模は控えめになっていきました。

しかしながら、ITの最先端の情報や市場は投資してわかることも多いのでアメリカの投資活動は続けていました。私自身、2013年当時は経営企画におりましたが、ずっと「アメリカで投資事業をしたい」って言い続けていたんです。大学時代に読んだある本がきっかけで、将来はシリコンバレーでベンチャーキャピタルの仕事をしたい、と思っていたので。そんなタイミングで運よく、アメリカでの投資のポジションが空いたので、アメリカ行きが決まりました。以降、1人でイチからネットワークを作り続けて今に至っています。

ーー相川さんは社長室長から投資担当という経緯だと聞きました。


相川

相川:2016年から社長室長を務めており、社長室としてスタートアップへの投資を進めてきました。その中で株式上場を果たしたメドレー、ビジョナル、サイバーセキュリティクラウドなどへの投資を行なってきましたが、単発的な取り組みであったため人材の育成など組織的な強化が進めにくいという課題がありました。そのような課題を解消するために2020年にグリーベンチャーズを新設し、長期的に投資に取り組むための体制を整備しました。

投資事業で得られた情報をグリーへ還元し、価値を高めていく

ーースタートアップ投資によるメリットは利益以外にもありそうですね。


筒井

筒井:そうなんです。シリコンバレーなどで話題になっている最先端の情報を集めて日本のコミュニティに還元し、グリーグループの事業にも貢献できるというメリットは確実にあります。例えば、数年前にはVRが新しいプラットフォームになる可能性の高い分野だという情報を集め、グリーとしてVR事業をやりつつカンファレンスも開催し、それを全世界に発信するなどもしました。


相川

相川:筒井さんがその当時に集めてきたVR/AR領域の情報は、今の『REALITY』やメタバース事業などで生かされています。その意味では、投資事業もグリーグループの3つの事業の柱とも繋がっているんです。


筒井

筒井:REALITY社の代表である荒木さんとは、かなりの頻度で情報のやりとりをしていますね。日本とアメリカ、それぞれで今流行っているものについて情報を共有できているので、「次に何が来るのか」について高い確度で知ることができます。

ーーこうした日本のコンテンツについて、日本や海外の起業家はどのように見ているのでしょうか?


筒井

筒井:最先端でビジネスをしている起業家たちは、日本のコンテンツやそれを生み出す企業に対して高いリスペクトを持っています。そこにはもちろんグリーグループも入っていて、それが我々のファンドの強みにもなっています。出資したあとには、情報やノウハウを提供するのはもちろんのこと、グリーをはじめとする経験を積み重ねてきた会社とも繋げると、とても感謝されます。


相川

相川:現在、金融緩和政策により世界中で資金が余っていて、スタートアップ投資においても投資家の間での激しい競争が生じています。起業家にしてみれば、どの投資家から投資を受けることが自分たちにとって最もメリットがあるのかという点が気になる。つまりスタートアップに提供できる資金以外のメリットがない投資家はスタートアップに選ばれない・投資できないという状況になっています。


筒井

筒井:お金はコモディティ(商品)なので、誰から受け取っても同じ金額です。それ以外に何を起業家側へもたらすことができるのかというところで、投資家側も勝負しているんです。


相川

相川:投資事業はSNSやゲームといったこれまでのグリーグループの事業の存在感や社会的認知があり、それが投資家としての強みになっています。その強みを生かしてスタートアップへの投資を行い、グリーグループの情報・ノウハウを活用して事業支援をした上で、そこで得られた知見や情報などをグリーグループに還元できることはユニークな点だと考えています。

選ばれる投資家へ。グリーそしてインターネットの未来のために

ーー過去の成功事例やうまくいった取り組みなどを教えてください。


相川

相川:グリーからの投資先ではビジョナル、サイバーセキュリティクラウド、Fringe81が株式公開に至っています。またニュースアプリを運営するスマートニュースは日本では数少ないユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業)となっています。


筒井

筒井:アメリカの取り組みですと、アバター技術を持ったサンフランシスコにある会社が、2020年12月にロブロックス社に買収されたのですが、こちらは一部の対価を株式で受け取っていたので、ロブロックス社が上場した際に大きなリターンが出ました。あとは、ブロックチェーン関連の会社に投資しているんですが、そこがトークンを発行したことで株価が値上がりし、リターンが大きく出ているというケースもあります。この会社はもともとVR事業を行なっている会社だったのですが、投資した後で仮想通貨にピボット(事業変更)したケースです。ベンチャー投資はアーリーステージで投資をするので、結構な頻度でピボットするんですよ。

ーーグリーグループの投資は、シードやアーリーステージが中心だと思いますが、どういう規模なのでしょうか?


筒井

筒井:シードは起業直後で事業アイデアか、プロトタイプのみがある状況です。アーリーは社員が5〜10人くらい。まだ売上はなく、商品やサービスが完成してやっと会社としてのトラクション(売上やユーザーの伸び)が出てきたかどうかという段階です。ベンチャーキャピタルからの投資は起業家にとっては“返さなくていいお金”ですが、投資する側はその分のリターンが見込めるサービスなのかどうかという点をしっかり見ています。


相川

相川:投資事業は結果が出るまでそれなりの期間、場合によっては10年かかるので、投資先のスタートアップを支援し続けていくための組織の安定度が重要です。そのような意味でグリーベンチャーズの設立や7月1日にプレスリリースで発表した「GREE LP Fund」の設立は 「投資を通じたスタートアップエコシステムへの貢献に長期的にコミットする」というグリーグループのメッセージになっています。

ーーこれからの将来像について教えてください。


相川

相川:グリーベンチャーズ、GFR、STRIVE、この3本柱でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を推進していきます。その中で、我々グリーのミッションである「インターネットを通じて、世界をより良くする。」という方針のもと、「投資を通じて、インターネットの世界をより良くする。」というミッションの実現に向けて取り組んでいきます。またグリーの投資事業の原資はゲームをはじめとした既存の事業で築いたものであり、それらを投資事業で活用することで利益を生み出し、ゲームや新規事業に継続的に取り組むことを可能にする事業環境の一環となれればと考えています。


筒井

筒井:本当にその通りです。皆さんのおかげで成り立っている部門なので、これからも上手に運用して、情報をグリーグループの皆さんに還元するだけでなく、企業価値を高めるように日本とアメリカで一生懸命頑張っていきたいと思います。