【特集】「より良いプロダクト」を目指して、QAが取り組むこと。

グリーのものづくりにおける「縁の下の力持ち」とも言える存在、それがQA(品質保証)チームです。より良いゲームをお客さまに提供するために、彼らはどんな取り組みを行っているのでしょうか。その徹底したこだわりの裏には、プロダクトの“番人”としての強い使命感がありました。


鳥越

鳥越 Quality Assurance部 部長
ITコンサルタント会社勤務を経て、自身の可能性を広げたいと6年前にグリーに入社。「どうすれば会社や組織、業界や世の中が良くなるか?」を常に自問自答するなど、誠実かつ熱血なリーダーシップで部下からの信頼も厚い。


佐野

佐野 Quality Assurance部 シニアマネージャー
QAを専門とするベンチャー企業に勤務し、そのキャリアをよりスピード感のある会社で生かしたいと5年前にグリーに入社。プライベートでは料理とヨガと島旅、そしてときに猫と遊ぶなど、癒し系の趣味でオンオフを切り替えている。


長谷川

長谷川 Quality Assurance部 マネージャー
入社以来5年にわたってQA業務を担当。「どのようにプロジェクトを進めれば品質が向上できるか、エンジニアやプランナーがQAと一緒に考える社風がある」とグリーを評する。休日はオートバイでのソロツーリングや沢登りなど外遊びでリフレッシュ。


野澤

野澤 Quality Assurance部 新プロダクトグループ
前職でも医療系情報システムのQAを担当するなど、品質リスク管理の分野で長いキャリアをもつ。より大規模なQAに携わりたいと約3年前にグリーに入社。ゲームだけでなく、マラソンやスノーボード、ドライブが趣味というアクティブな一面も。


福田

福田 Quality Assurance部 Product Operationグループ アソシエイトマネージャー
大学では製造業の品質管理について学び、IT業界でQAに関わりたいと3年前に新卒でグリーに入社。「不撓不屈」をモットーにQA業務に邁進し、グループ会社へのゲーム運営移管など大規模プロジェクトも担当してきた。

開発と肩を並べてゲームを「作る」

――QAという部署は、どんなお仕事をするところですか?


鳥越

鳥越:簡単に定義すると「グリーが出しているプロダクトの品質を担保する仕事」です。もう少し具体的に言うと、お客さまがグリーのプロダクトで遊んでいただいたときに「バグが多くて品質が悪い」とか、「全然面白くない」といったことがないように、世に出す前に隅々までチェックする部署がQA部です。

――定義はとてもシンプルですね。それでは、具体的な業務内容についても伺えますか?


鳥越

鳥越:まず、部署は大きく2つに分かれています。一つが、いわゆる「Quality Assurance」(品質保証)といって、ゲームのテストをするチーム。ちゃんと仕様を満たしていてバグがないか、想定したとおりに動いているか、新旧さまざまなモバイル端末で動作するかを細かく検証していきます。もう一つは「審査」といって、プロダクトに関わるいろいろな物事がきちんとレギュレーションを守っているかを審査するチームです。たとえばイベントでお客さまに景品を配ったり、アイテムを付与する行為の裏側には、法律が存在しています。それがたとえお客さまを喜ばせたくて企画されたことでも、思わぬところでアウトという可能性があります。だから審査で事前にスクリーニングして、企画が法的要件を満たしているか、業界ガイドラインに準拠しているかなどを第三者目線で精査しています。

――最後の砦を守っている番人のような部署なんですね。


鳥越

鳥越:そういう側面もありますが、QAに関して言うと最終段階だけ完成品をやりこんでチェックするわけじゃないんですよ。企画~開発~設計というモノづくりの流れの中で、それぞれのフェーズで少しずつチェックしては直すという作業を何度も繰り返しています。だからグリーのQAは、開発と一緒に同じ方向を向いて走っているという感覚が強いですね。またウェブゲームとネイティブゲームではゲームの奥深さや作り方がそれぞれ異なるので、佐野と福田が所属しているウェブ系チーム、長谷川と野澤が所属するネイティブ系チームに分かれて検証作業にあたっています。

QAは「頼りになる協力者」でありたい

――QAのミッションというものがだいぶ明確に見えてきたので、実際の作業内容について伺いたいと思います。いわゆるバグがないかとか、動作確認とか、検証作業はだいたい何項目くらいあるのでしょうか?


野澤

野澤:プロダクトや登場するキャラクター数にもよりますが、直近のプロダクトでは5万項目くらいありましたね。キャラクター、アイテム、シナリオ、バトル……細かいカテゴリーごとにそれぞれ数千ものチェック項目があり、一つ一つ確認してエビデンスを残していく、というのが実際のテストで行う作業です。


長谷川

長谷川:こうしたチェック項目に沿って機能をなぞるだけのテストもあれば、「いじわる試験」といってわざと機能に反するような動きを試すこともあります。

――開発チームが嫌がりそうな内容ですね(笑)。


長谷川

長谷川:そうですね。でも実際のお客さまが開発で想定していない動きをする可能性もあるので、やはりこうしたテストをすることは必要なんです。だからわざとおかしな操作をしてみたり、入力できない種類の文字を無理やり入力してみたり、通信中にネットワークを落としてみたり。アクセスを集中させて負荷試験も行いますね。


福田

福田:こうしたテストは人手も時間もかかるので、開発の方と連動してテストの効率化を図っています。プロダクトが運用段階に入ると、テストサイクルがとても短くなります。たとえば先ほどのいじわる試験のように「上限100回までのガチャは101回目ではどうなるか」を検証したいのであれば、開発チームと相談して「じゃあ100回擬似的に回したことにするツールを作って導入しましょう」など、協力しあって作業効率を改善しています。これはすごくグリーらしい特長だと思います。


佐野

佐野:そういうQAとしてのテストはもちろんですが、納期が遅れそうなときは作業プロセスの改善をこちらから提案することもあります。開発プロセスを効率化して負担が少なくなれば、その分こちらもしっかり検証できて、最終的に品質向上につながるので。ちょっとおこがましいかもしれませんが、開発の体制まできちんとお手伝いができることが、自分たちが誇れるQAだと思っています。

――プロダクトだけに向き合うのではなく、品質向上のために開発プロセスにも目を向けているんですね。


野澤

野澤:そうですね。品質の高いプロダクトというのは、品質の高いプロセスからしか生まれないと思っています。特にネイティブ系チームではプロダクトチームと机を並べていて、一緒に作っている感覚が強い。たとえば、チームに問題があればそこにも介入して、「こういうふうにプロセスを変えたらどうですか」と提案します。バグを見つけるのも私たちの仕事ですが、プロセスの負荷を早めに発見してバグが出てこないように予防するのも、QAの役割のひとつだと思っています。


鳥越

鳥越:他社の方々と話してみても、グリーのQAの効率化に対する取り組みや協力体制の構築はかなり進んでいるなと思っています。グリーは急成長した会社ですが、一朝一夕でこうしたプロダクトサイドの人たちとの信頼関係が成り立つわけではありません。佐野や長谷川などマネージャー陣が長年かけてプロダクトチームと粘り強く関係を築いてくれたことで、開発もこうした提案を受け入れてくれるようになったんだと思います。


佐野

佐野:私と長谷川が5年前に入社したばかりのころは、まだ信頼関係が築けていなかったこともあって、ミスや障害が発生するたびにギスギスした空気になってしまうことがよくありました。でも一つ一つ問題を解決して、「QAはちゃんと見てくれているんだ」という実績を積み重ねたことが、信頼関係の構築につながったと思っています。いまでは開発側から「QAさんも大変かもしれないので、こうしましょうか」と逆に提案をいただくこともあるくらいなんですよ。


長谷川

長谷川:最初は嫌がられていたかもしれませんが(笑)、「より良いプロダクトをお客さまに届けたい」という根っこの部分では開発もQAも一緒ですから。QAがきちんと正しいアウトプットを出して真価をわかってもらえたことで、「頼りになる協力者」として見ていただけるようになったのかな、と思っています。

お客さまのために、業界全体のレベルアップを

――先ほど他社のお話が出たのですが、どのように情報交換しているのでしょうか?


鳥越

鳥越:僕らのようなゲームの品質管理部門って、他社と交流する機会がなかなかないんです。だからグリーのQAが業界全体でどんな立ち位置にいるのかを把握したいと思って、1年半くらい前から他社の方々を招いて勉強会を開催するようになりました。もちろんお互いに企業秘密はありますが、交流してノウハウを共有し、業界全体をレベルアップさせた方が最終的には遊んでいただくお客さまのためになるはずだと思っています。たぶんこういう集まりは、ゲームのQAという分野では、初めてではないでしょうか。第1回は1社ではじまり、今では10社以上ご参加いただくようになりました。

――他社との交流で見えてきたグリーQAの特徴や、今後成長させたいところがあれば教えてください。


野澤

野澤:グリーではかなり計画的にテストできていることがわかりました。ネイティブゲームではすべて新しく開発することが多かったので、予算をかけて全体を網羅するようなテストをやっていますが、それが運用フェーズに入ると網羅するのは非効率になってしまう。範囲を決めてリスク分析して、やるべきところに時間と予算をきちんとかけるという点では、グリーはかなり進んでいましたね。


福田


福田:新規プロダクトと運用フェーズのプロダクトではQAのやり方が違うと話しましたが、その移行はうまくいっているのかなと思います。あとは話に出たとおり、開発との協力体制がしっかりできていることですね。


長谷川

長谷川:逆に他社ではカスタマーサポートとの連携が強化されていたりと、参考になる点もありました。そこは今後私たちも勉強して取り入れていきたいところです。

――そんな「グリーらしいQA」を実現していくうえで、どのようなところにやりがいを感じますか?


福田

福田:僕は大学で品質管理を学んでいたので、多くのプロダクトが生み出されるゲーム業界でQAに関わりたいと思って入社しました。たとえばトヨタが世界一になれたように品質管理を極めた会社は強いと思うんです。グリーでは単にテストだけではなく、開発計画や面白さという部分にも踏み込んで、プロダクトの品質向上を目指せるところにやりがいを感じますね。


野澤

野澤:いま僕が興味あるのは、テスト計画を作る部分ですね。対象をリスク分析してテストリソースの配分を決めたり、メリハリをつけたり。それを実際にモニタリングしていて予想が当たると楽しいです。


佐野

佐野:わかります。言い方はあれですけど、QAの職業柄でしょうか、シメシメって思っちゃいますね(笑)。


長谷川

長谷川:僕は、テストの先にある「面白さの品質保証」について、長年QAを担当していてもいまだに奥が深いなと感じています。機能やシステムには○×をつけてしっかり品質担保はできますが、ゲームはエンターテインメント。ウケるかウケないか、好きか嫌いか、あいまいなところもある。もちろんモニターの方にプレイしてもらって客観的な感想をいただくこともありますが、面白さって探求するとキリがないんです。これで足りているか、これで精一杯か、どこまでやればお客さまに喜んでもらえるのか、常に自問自答しています。

「品質保証」というと機械的なチェック作業が中心で、無機質なイメージをもつ人が少なくないのではないでしょうか。しかし実際にお話を伺ってみると、開発現場の人に働きかけたり、検証を通じてお客さまの満足をどこまでも追求したりと、熱血な仕事ぶりに驚かされました。「ゲーム」というエンターテインメントの裏側は、QAのみなさんのこんな情熱とひたむきさに支えられていました。

※取材は2017年7月に行いました。

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