グリーグループを支えながら財産を育む、特許権利化のプロフェッショナル集団

グリーグループには特許権利化のプロフェッショナルが在籍します。各事業のサービスやプロダクトの開発プロセスで生まれた新しい技術を発掘し、積極的に特許出願を行っており、これまでに国内外で権利を取得した特許はなんと約1400件。現在、特許出願中の発明も多数存在します。今回は、知的財産グループ特許チームの主要メンバーに、事業部との連携や各分野における取り組み、チームとして目指す姿などをお聞きしました。

イチハライチハラ:グリー株式会社 コーポレート本部 法務総務部 知的財産グループ パテントエキスパート
2012年グリー入社。前職のメーカーでの特許業務を経て、グリー入社後はゲーム等の様々な分野の特許業務を担当。

ワギュウワギュウ:グリー株式会社 コーポレート本部 法務総務部 知的財産グループ
2011年グリー入社。前職からグリー入社後1年ほど人事部にて制度企画等に携わる。育休から復職後、2015年より主にゲーム分野の特許業務を担当。

ヤマギワヤマギワ: グリー株式会社 コーポレート本部 法務総務部 知的財産グループ パテントエキスパート
2017年グリー入社。前職の特許事務所では特許調査業務に従事し、グリー入社後は、ゲーム分野の特許業務を担当。

グリーが多岐に展開する事業の競争力強化に貢献

ーー特許チームの役割と、それぞれの業務内容を教えてください。


イチハラ

イチハラ:グリーグループでは、ゲームやメタバースといった新しいサービスを開発する際に、新しい技術が数多く生まれています。この多様な技術を生み出した開発者のアイデアを保護するために特許の出願を実施しています。私は現在、バーチャルライブ配信アプリ『REALITY』を代表する、メタバースの分野を担当しています。


ワギュウ

ワギュウ:私はゲームの分野を担当しています。特許チームでの役割としては、開発中のプロダクトや仕様書を読み解きながら、他社の権利を侵害していないかを確認することも重要な仕事です。


ヤマギワ

ヤマギワ:私は、権利化した特許の管理を担当しています。具体的には、すでに取得済みの特許の内容を評価して、評価結果をこれから出願を検討している発明へフィードバックすることでよりよい権利にできるように分析しています。

ーー現在グリーグループではどのくらいの特許を取得しているのでしょうか。


ヤマギワ

ヤマギワ:審査中など権利となる前の「出願中」と、権利になった後の「登録」の2つのステータスに分けられるのですが、現在グリー全体で登録している数は国内で1100件以上、海外で200件以上あり、現在出願中の発明も多数あります。


イチハラ

イチハラ:開発側から新しい技術が生まれるたびに、積極的に出願するようにしています。最初に特許出願した2011年頃、多くの同業他社が特許権を持っていたにもかかわらず、グリーは当時の主軸であったゲーム分野で1件も持っていなかったこともあり、翌年からこの特許チームが発足されました。


ヤマギワ

ヤマギワ:そして、グローバルに展開するグリーの事業の競争力強化に貢献していきたいという思いが背景にあるのも積極的な出願の理由になっています。

ーー特許チーム一丸となって出願・管理されているその「特許」ですが、そもそもどのような権利なのでしょうか?


ワギュウ

ワギュウ:特許権とは、発明者に一定期間、一定の条件のもとに独占的な権利を与えて発明の保護を図るものです。また、その発明を公開して利用を図ることにより、新しい技術を人類共通の財産として、技術の進歩を促進し産業の発達に寄与しようというものです。

出願審査の傾向と対策もチームで検討! グリーの持つ「新しさ」を提示する難しさ

ーーメタバース分野、ゲーム分野、管理の分野などがあると聞きましたが、それぞれの担当分野で難しい点はありますか?


イチハラ

イチハラ:メタバース関連は比較的特許を取得しやすい分野で、現時点では70件ほど登録されています。その反面、開発のスピードが速く、スケジュールも細かくプロットされているという側面から、開発状況を常にキャッチアップする必要があります。皆さんのスピードに追いつくよう、日々奔走しています。


イチハラ

ワギュウ:ゲーム分野は、すでに権利化されている数が膨大です。特許審査官において、すでに取得されている特許と新しく出願した特許を比較する文献も膨大です。

ーーゲームと一口で言うと、範囲がとても広く感じられますね。


イチハラ

ワギュウ:そうなんです。何よりも、“どの部分が新しい技術であるか”を文書で説明することが難しく、出願された特許が差し戻されてしまうことがほとんどです。そのため、他の技術とは異なる「アイデアの核」をより分かりやすく特許審査官に提示するためにはどうしたらいいか、常に頭を悩ませています。


ヤマギワ

ヤマギワ:特許にできないという旨の拒絶の理由は書面で届きます。その結果を確認しながら今後の傾向と対策を練り、特許チームのメンバーで共有しています。
また、着任してから約4年の間に数多くの拒絶理由書面を見てきましたが、審査や評価の方法の変化が見て取れます。そのため、新規出願を検討している案件については、その時の審査・評価動向に合わせて出願書類をアップデートするといった取り組みも行っています。

時には面談に同行も。チームの枠を超え、開発担当と二人三脚で特許取得を目指す

ーー実際に開発を担当されている事業部の方々とはどのような連携を取られているのでしょうか。


イチハラ

イチハラ:グリーグループは、開発やプランナーとの距離が近いように思います。チャットで気軽にやりとりができて、レスポンスも早く、特許出願に気持ちよく協力してくれます。
さらに出願が通らなかった場合、通常は書面で差し戻しの理由へ応答しますが、特許庁の審査官に面談を申し込むこともできます。こちらの文章だけでは技術の新規性が伝わらないと感じたときは、開発者である発明者に同行していただき、技術的な説明を直接していただくこともあります。

ーー同行まで対応してくださるのですね。それだけ開発担当の方々にも特許出願の知識があるように思います。


ヤマギワ

ヤマギワ:特許出願については、特許の出願フローや取得の重要性を把握されている開発者の方々が本当に多くなったように感じています。開発者の方から詳細な特許に関する相談の連絡をもらったり、特許出願の過程でのディスカッションを通して新しい発明の種を発見することもあります。


イチハラ

イチハラ:開発が急がれているプロダクトや、携わる人数が少ない案件などは、出願に向けた作業に多くの時間をかけるのが難しい場合もあります。そのため、一度の出願で、できるだけ幅広い範囲での特許を取得できるような「コスパの高い出願」に努めています。


ワギュウ

ワギュウ:また、作品の開発段階から早め早めに積極的に働きかけるよう心がけています。

ーー特許チームの皆さんがゲームの開発段階から携わるのですか?


ワギュウ

ワギュウ:はい。例えば、新しいゲームの開発過程を見ていると、そのゲームで使用したい技術がなんとなく見えてきます。仕様が固まる前のフェーズで、すでに特許を取得している技術や今後活用できそうな技術を提案したり、さらには他社の権利を侵害する可能性をお伝えしたりすることもあります。
仕様が固まってからの切り戻しは、機能によって期間の幅があります。軽微な改修で済む場合であれば良いのですが、時にはゲームの根幹に関わる可能性もあり、リリースに影響を与えかねません。そのため、できるだけ開発を順調に進めてもらえるよう努めています。既存のIPを生かしたプロダクトの場合には、できるだけ原作のアニメや小説に触れてIPやプロダクトの目指す世界観を理解した上で仕様のご相談をするようにしています。


イチハラ

イチハラ:とにかく皆さん協力的で助かっています。この技術なら特許が取れるかも……と声をかけてくださったり、リストを共有いただいたり。本当にありがたいです。

グリーグループが生んだ知恵をシェアし、技術の進歩に寄与する

ーー特許チームで今後注力していく取り組みを教えてください。


イチハラ

イチハラ:ゲームの分野ではクロスライセンス※に繋げられるように、引き続き特許出願に注力していきます。すでに他社の特許が数多く存在するため、他社の特許侵害をしないよう開発において制約が増えていく一方です。
特許は出願から1年半が経過すれば公開されますので、他社と自社の公開された出願内容を見比べて、クロスライセンスの可能性を探っていきたいと考えています。その結果、グリーグループにとっては開発の自由度が高まり、ゲーム業界全体におけるサービスの質の向上につなげていきたいと思っています。

※クロスライセンス:特許権者がお互いの持っている特許権を交換するように、相互に利用し合う、すなわち実施できるようにするライセンス。
引用:https://www.jpo.go.jp/toppage/dictionary/japanese_ku.html


グリーグループ内にキャラクターを用いて漫画形式で特許について学んでもらう機会も設けている


イチハラ

イチハラ:メタバース事業の『REALITY』はグローバルに展開しているサービスです。国内だけでなく、国外においても幅広い特許出願を急ぐ必要があると感じています。


ヤマギワ

ヤマギワ:私は、登録された特許の評価の業務を行なっているので、過去の評価結果を未来の特許に対して生かしています。特許の評価をしていると、出願時には考えられなかった、意外な分野にも関連するような特許を再発見することがあります。例えば、Webゲーム時代の特許が、メタバースといった新しい分野に関連することに気づいたこともありました。


ワギュウ

ワギュウ:創業期から運営しているタイトルについては、毎月新しい仕様を組み込んでいます。どんな技術が蓄積されているかを正確に把握するため特例子会社であるグリービジネスオペレーションズ社に協力を仰ぎ自社製品のレビューを行い、その結果を開発者の方々にもフィードバックしています。


ヤマギワ

ヤマギワ:特許の出願が活発化しているメタバースなどの新規事業に比べて、既存のプロダクトを運営する方々とは、どうしても関係性が薄くなってしまいます。そこで、プロダクトより発信される様々な情報から特許につながる種を探しながら各事業部にアプローチし、少しでもお互いの距離を近くしていきたいと思っています。



イチハラ

イチハラ:特許の出願には手間はかかりますが、グリーグループでも、新しいアイデアや工夫を生み出して技術の進歩を促進し、グループの事業貢献にも寄与していきたいです。

ーーありがとうございました!