2019年度「千葉大×グリー」学生座談会 ~VTuberで広がる教育の可能性~

-2019年度千葉大学共同授業レポート-

こんにちは。社会貢献チームの牛腸です。

グリーでは毎年CSR活動の一環として、千葉大学教育学部と共同で「教育の情報化」を担う教員の育成を目的とした授業をプロデュースしています。

今年度は、千葉大学教育学部の大学生たちが、VTuberを通して「創造力」や「表現力」を学ぶことをテーマに、小学生に向けた授業を実施してきました。
今回のブログでは大学生たちが半年間の活動をふり返り、それらを通じて感じた想いをインタビューしました。


撮影協力:都立中央図書館

座談会メンバー

千葉大学教育学部の皆さん
  • 立川さん:本演習のリーダー(3年生)
  • 郡司さん:端末管理担当、副リーダー(3年生)
  • 関谷さん:授業担当、副リーダー(3年生)
  • 新井さん:授業担当(3年生)
  • 山本さん:動画担当(3年生)
  • 橋本さん:授業担当(2年生)


白井:GREE VR Studio Lab ディレクター

(※以下、敬称略)

みんなが主役になれる企画にしたかった

ーー数ある大学の授業の中で本演習を受講したきっかけは?


山本

山本:私は就職でエンタメ系の業種を考えていたので、いい経験になるかなって。郡司さんが誘ってくれたのも大きいです。


郡司

郡司:実は山本さんは専攻が音楽科で、民間企業への就職を希望していると聞いていたので。この演習は音楽要素もありそうだし、ぴったりだと思ってお誘いしました。


橋本

橋本:なんとなく、初回は話だけ聞いてみようかなと思って参加したんですが、気がついたらそのまま受講していました。


立川

立川:私は「藤川先生の研究室に所属しているからなあ」という感じで受講しました。

――なるほど。最初は「なんとなく」受講した人もいたみたいですが、いきなり初回の授業で、「VTuber」というお題から企画を考えてくださいと言われて、どうでしたか?



立川

立川:小学校教育における教科の指定もなかったので、総合学習という枠の中でどうすればいいのか、当初は全く想像がつかなかったです。「VTuber」を取り入れた楽しい企画というだけではだめだ、教育的観点で何を学ぶのか整理しなきゃ、というのが本当に難しかったです。


郡司

郡司:前半は目指すゴールを決められなくて、試行錯誤していた気がします。


立川

立川:最初のアイディアは「学校紹介動画」だったんだけど、VTuberでやる必要性を見つけられなくて。色々な授業のアイディアを調べていく中で「脱出ゲーム」という手法が面白そうだなと思い、そこにみんなからのアイディアをつけ足していったイメージですね。


郡司

郡司:私はとにかく「VTuber」を体験する子を増やしたかった。配信ブースをたくさん作ったほうが「主役」が増やせるかなと思い、7つのブースづくりを提案しました。全体の構成としてiPad上で本当のゲームとしてやろうという話もあったんだけど、仕様がまとまらなくて。結局リアルのブースにしようっていう形に決まったのかな。


関谷

関谷:学校のどこを使うのか、どういう順路で回ったらいいか、VTuberはどうやって配信するのか・・・決めなきゃいけないことがいっぱいあるのに、全然決められない。


立川

立川:紙面で計画しても、実際に小学校にいってやってみるとできなくて。ちょっとこれ変えたほうがいいかもねってなったりしたね。


関谷

関谷:最後の授業も前日まで調整し続けて、夜にファミレスで地図を作ってた気がする(笑)。



完成した地図/当日のブース配置

ーー小学校で何回もテストなどを繰り返して、あの「体験型学習ゲーム」が出来上がっていったのですね。同時並行での小学6年生に向けた授業はどうでしたか?



立川

立川:初回の授業は各班で精霊VTuberの「キャラクターづくり」をやりました。小学生は、アバターの色や服装を選択することに夢中になってしまい、彼らにとっては楽しい時間だったかもしれないけど、学びが少なくなってしまったことが反省点でした。


山本

山本:いや、確かに時間はかかったけど「どこが動くのか?」「どんな表情ができるのか?」子どもたちが自主的に「REALITY(※)」の動作を研究し始めて。あの時間があったから、後々の配信の練習などもうまくいったのではないかとも思うな。


新井

新井:2回目の授業では初回の反省を生かして、6年生自身が考えることを意識した授業を心がけました。ブースで出題するクイズが5年生にとって【探求学習】となるよう意識してもらいたくて。例えば問題が「〇か?×か?」だと運任せみたいになってしまう。逆に難しい問題にすると、iPadで調べて終わりになってしまうかもしれない。どういった出題をしたら、5年生自身が考えて答えを導き出せるのかを工夫してほしいと説明したんですが・・・6年生にはイメージしづらかったようで、ポイントをうまく伝えきれなかった・・・。


関谷

関谷:私たちが「6年生ならできるだろう」と考えていたことと、実際に6年生自身ができることにちょっと差があって。準備の段階ではわからなかったので、難しかったです。

※Wright Flyer Live Entertainmentが提供しているバーチャルライブ配信アプリ。今年度の演習では、本アプリを使って精霊のキャラクター作成を行いました。

ーーそんな6年生との試行錯誤、6回の授業を経て、1/29には5年生を招待して「体験型学習ゲーム」を体験してもらったわけですが、ゲームのオープニングやエンディング動画も学生みんなで作成していたんですよね?



山本

山本:はい。全てが同時並行の中、動画も作らなくてはいけなくて。授業担当のみんなが方向性を決めて、そこにシナリオ・脚本・絵・音楽を全部詰め込みました。なので、動画作成チームはその1週間がピークだった気がします。編集経験者がいたから、なんとかできたけど・・・本当に大変でした(笑)。

ーー今回の体験型学習ゲームでは「カラフル王国」から色がなくなってしまった!というストーリーでした。動画に登場するカラフル王国の姫を演じてみて、どうでしたか?



山本

山本:最初は自分の声が聞こえてくるのがちょっと嫌だったんです。仲間内からもダメだしされて。何回も何回も練習して、キャラクターが出来上がっていった感じ。おかげで、VTuberとして演じることや動画作成の知識が身についた気がします。


立川

立川:授業の掴みとして、本当に姫の存在が大きかったです。


新井

新井:ゲーム構成として6年生が精霊として登場する前に、姫が動画で世界感を作ってくれていたので、いいお手本になっていたんじゃないかな。

ーー1/29の授業にはGREE VR Studio Labの白井も参加していましたが、「体験型学習ゲーム」を実際にみて、どういった印象を受けましたか?



白井


白井:アバターで演じることで、男子も女子も、失敗を恐れずに挑戦できているのが素晴らしかったですね(動画を見ながら)!恥ずかしがらずにライブの表現と体験を作り出すこと…そこにVTuberでやることの意義があったのかなと感じました。


郡司

郡司:リハーサルの際、私は配信練習を担当したのですが、1班に「2班がやっている様子」を見られるような時間を作ったんです。「配信を受取る側」を体験した結果、表現力を身に着けるいい練習になったと思っています


橋本

橋本:6年生同士のやりとりだと「上手にやろう」という感じが見られたのですが、5年生を相手にしたとたん「楽しませよう」という気持ちが芽生えたのが感じられて、とても驚きました。


新井

新井:僕が担当していた班は、当日緊張してしまっていて。でも合間の時間にふり返りをして「何がダメだった?」「5分の持ち時間をどううまく使うか」と相談して、質問の仕方をリアルタイムで変えていて、授業の中でどんどん成長していく姿が見られたのが印象的でした。

「HDMIって何?」からスタートした演習だった

ーー演習全体を通じて、皆さんはどんなことを感じましたか?



新井

新井:イチから企画を考えて、それを授業に落とし込んで完成させるという経験は、大学の授業や教育実習では体験できないので、とても貴重でした。新しいテーマに取り組める、最先端技術に携わることができる、というのは大変だけど魅力的でした。


郡司

郡司:アバターを社会への情報発信のツールとして小学生が使いこなせていたのはとても素晴らしいと感じました。ふり返ってみると、本当に1人1人が主役になれる授業だったと思います。子どもたちにとっても貴重な体験だったんじゃないかな。一人一台のPC環境も大切だけど、今回の授業のような体験をもっと気軽にできれば、最先端技術に子どもたちが触れる機会も増えるのではないかと思いました。

ーー半年間でなにか自分自身の変化はありましたか?



関谷

関谷:「HDMIって何?」というところから始まった私が、後日、自分が所属する研究室の卒論発表会で「VTuber使おう!」「ここをHDMIでつないで、PCで投影して・・・」って提案までしていて。自分自身の成長をすごく感じました。もし、このままICTに関わりをもたずに学校現場に出ていたら、授業で絶対に困っていたんじゃないかな。本当にいい体験になったと思います。


山本

山本:ネットのコミュニティには、ちょっと「暗い」イメージがあったんですが、小学生たちがとても楽しそうに使いこなしているのをみて印象が変わったし、私自身も姫を演じる機会をもらって、仮面を被ることで、新しい自分を発見できた気がします。最初、自分がやるの?って思ったりもしたけど、結果的に得たものはとても多かったです。


立川

今回、自分が何か変われたらいいな、と思ってこの授業をとりました。自分の成長という意味では、苦手なリーダーを担当させてもらえたことがとても大きかったです。普段の生活と違って、自分がどう思うか、どうしたいかの意思がないと、リーダーとして、相手にも伝えられないし、指示もだせないなと痛感しました。


橋本

橋本:自分自身は、同世代の中では比較的情報化社会になじんでるつもりだったのですが、その反面「インターネットの危険性」に囚われている部分もありました。でも、子どもたちは自分よりもはるかに技術へ抵抗せずに「まずは使ってみる!」という精神でいることが分かりました。だからこそ、授業を作る側も危機管理は大事だけれど、あまり縛られすぎずエンタメの中に教育を見出していく気持ちで授業を作っていけばいいんだ、というのが大きな学びでした。


白井

今回の企画ができあがっていく過程を通じて、新しい技術を「知っているか知っていないか」より、どう使いこなしていくかがとても大事だと感じました。大学生のうちに、自主的に新しい技術と向き合う経験ができたのはとても貴重だし、更には小学生に対して機会提供をできたことも素晴らしいですね。
また、今回はエンターテインメントの作り手として、企画・準備・運営・効果測定まで全て体験できたことも実はなかなかできることじゃない体験。企業とのコラボレーションの魅力を感じてもらえたんじゃないかなと思います。

演習を担当した先生方からのメッセージ


藤川

千葉大学教授 教育学部副学部長 藤川大祐先生

学校教育では社会の変化に対応した新しい教育をつくっていくことが課題であり、教員養成教育ではこうした教育を担う教員を養成することが課題です。こうした教員養成においては、すでにやり方が決まっていることができるようにするだけなく、新しいテクノロジーと向き合い、新たな取り組みを自分たちで創造できることが重要です。今回、学生たちが試行錯誤しながら楽しい実践をつくってくれたことは、きっと今後さまざまな形で活かされていくことと思います。グリーの皆様や附属小学校の教員・児童のみなさんに、感謝いたします。


飯島

千葉大学教育学部非常勤講師 飯島淳先生

大学生と児童のみなさん一人ひとりの個性、特技、アイディアが相乗した結果、「誰もやったことがないこと」を具体的な授業として創り上げてくれました。実践に至るまでの過程は試行錯誤の連続でしたが、みなさんが自分のできる役割を見出し、大学生はクラウドをはじめICTを積極的に活用しながら、授業外の分散した時間においても非同期に協働していた姿が印象的でした。高度な挑戦を自己マネジメントと共に達成できたこの経験を、社会へ出てからもそれぞれの活動の場所で生かしてほしいと願っています。そして、ご協力頂いたすべてのみなさんに感謝申し上げます。


小池

千葉大学教育学部附属小学校教員 小池翔太先生

「今日VTuberの授業ある!」と,6年生は毎回楽しみにしていました。5年生を招待した授業では,6年生がどこまで発表できるのか,学生はとても不安だったと思います。しかし,6年生は,学生と学習したことを生かして,様々な表現の工夫ができました。学生は,成長する子どもの姿に感動したことと思います。私自身は,この演習を通して成長する学生の姿にも感動しました。今回の演習を通して,学生の皆さんが,授業づくりをはじめ,子どもの成長を目の当たりにできる教師の仕事に魅力を感じていただけたら,とても嬉しいです。

グリーは今後も、「エンターテインメント×学び」をテーマとしたCSR活動の中で、皆様にさまざまな学びを提供できるよう、取り組みを行っていきます。

千葉大学教育学部の皆さん、半年間お疲れさまでした!

2019年度千葉大学共同授業レポート
2019年11月11日:2019年度千葉大学共同授業がスタートしました
2019年12月05日:小学生がアイドルやゴリラに!?VTuberになってさまざまな表現方法を学びました。
2019年12月25日:「伝える」難しさを実感!VTuberに求められる表現テクニックとは?
2020年2月27日:「カラフル王国」に色を取り戻せ!大学生と子どもたちが作る「精霊VTuber」学習ゲーム

今回の座談会は、都立中央図書館にご協力いただき、交流ルームを使用して実施しました。

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