モバイルゲームの開発・運用に特化し数々のヒット作を生み出してきた株式会社ポケラボと、「データマーケティングエージェンシー」を掲げ、データ×アドテク、データ×マーケティングを事業の核として成長を続けるGlossom株式会社。躍進を続ける2社が手を組んだ時、そこに新たなシナジーが生まれました。
柴田:Glossom株式会社 取締役 兼 グリーアドバタイジング株式会社 代表取締役社長
2008年グリーに入社。広告事業本部でGREE Ads Rewardの立ち上げ、グリーアドバタイジングにて海外事業部の立ち上げなどを経験。2016年グリーアドバタイジング代表取締役社長に就任。2019年よりGlossom取締役を兼任。
白瀧:株式会社ポケラボマーケティンググループ マネージャー
2018年にグリーアドバタイジングに入社し、入社初日からポケラボに出向中。『SINoALICEーシノアリスー』のWebプロモーションとコミュニケーションマーケを担当し、2019年からグローバル展開アプリのマーケティングを統括。
森:株式会社ポケラボ マーケティンググループ マネージャー
2016年グリーに入社し、2017年からポケラボに出向中。入社以降、プロモーションプランナーとして複数のネイティブアプリ担当を経て、2018年より『SINoALICEーシノアリスー』のマーケティングを統括。
短所を補い合い、長所を生かす。それぞれの仕事に誇りを。
ーーポケラボとGlossomはどうして連携するようになったのでしょうか?
森:ポケラボで制作するゲームのWebプロモーションにおいてGlossomと協力しています。ポケラボ内で全て行っていた時期もあったのですが、前田社長が過去の記事で語っていたように、「それぞれの個性や得意なことを生かす」ことを意識して、グリーグループ内でデジタルマーケティングに特化しているGlossomに一任することになりました。今では企画から一緒に入ってもらっています。
白瀧:そうなんです。デジタルマーケティングの委託というと、単にその領域だけを請け負っているように思われるかもしれませんが、そんなことは決してなくて、季節や周年イベントなどのマーケティング企画を一緒に1から考えて動いているんです。
1つの目標に向かってそれぞれの領域のプロ同士が阿吽の呼吸で進めていけるのが、ポケラボとの連携の特徴で、他のゲームスタジオ連携と違う点です。
柴田:実際、ポケラボとはグループ内でも特に深く濃い取り組みを行っています。企画にも一緒に入ることで互いに高め合い、さらに拡張したシナジーを作っているのが特徴です。
白瀧:企画にも関わることでプロモーションの全体像をつかむことができ、デザインや文章1つとっても、よりそれに即したものを生み出すことにつながるんです。また、マーケティングデータを生かして施策のPDCAを回しています。私はグローバル版SINoALICEのマーケティング責任者も担っていますが、プロデューサーともプロダクトとも連携してワンチームとして動いているので、「One for all, All for one」という考え方で仕事していますね。
チーム連携が生み出すシナジー。それぞれの強みを生かした体制構築
ーーここまでの体制を作り上げるにはいろいろあったと思いますが、そもそもGlossomがポケラボと組むことになったきっかけは?
森:きっかけは『SINoALICEーシノアリスー(以下、シノアリス)』ですね。『シノアリス』は尖った企画を考える事が多く、さらに版元や原作者など企画を進めるうえで許可を得る関係各所も多い。するとどうしても企画を練る時間や、コミュニケーションコストがかかってしまいます。しかしこれを疎かにしてしまっては、それこそ中途半端な企画になってしまうため以前から課題でした。
そしてもう1つは、デジタルマーケティングは膨大な知識と経験が必要ということです。企画に合わせどんなクリエイティブでどこにどれだけの広告を打つかを考え実行する事、また新しいツールなどを絶えずインプットしていくことは、先ほど言った企画立案と同時では難しかったんです。中途半端な企画を出すとヨコオさんからダメ出しも(笑)。そんな状況下で、デジタルマーケティングをGlossomにお願いすることになりました。
柴田:Glossomでは、グループ各社のデジタルマーケティング領域を任せていただくことが多くなりました。理由としてはグリーグループ全事業の効果計測ツールの共通化を行ったからです。各スタジオが複数の代理店と取引を行い、使用するツールやその定義もバラバラだったので、共通化と定義付けを提案しながらゲーム事業に横串で関わるようになりました。すると各スタジオでマーケターが足りないというニーズがあり、各グループ会社からデジタルマーケティング領域を任せていただくことになりました。
その中でもポケラボに関しては当初より前田社長から「がっつりやろう」と強い意志をいただき、Glossomから出向したマーケターへポケラボ社員と並列に目標や責任を持たせるという、まれにみるポジティブで良好な取り組みとしてスタートしました。
ーーなるほど。お互いのニーズがマッチした形ですね。すぐに成果がでましたか?
森:企画に専念する時間はもちろん生まれましたし、デジタルマーケティングでもしっかり成果を出していただいてました。
でもだんだんと成果が薄れていくのが目に見えてわかるようになってきたんです。運営期間が長くなるゲームあるあるだと思いますが、ユーザーにアタックし尽くしたというか、広告への反応が鈍くなりました。
白瀧:そうなるとこちらもクリエイティブを変えたり、掲載場所を変えたり、セグメントを変えたりといろいろ試行錯誤するのですが、伝えられた企画の中でやるのはどうしても限界があります。例えば使えるキャラクターの絵は決まってますから、その中でいかに工夫していくかということになります。でもゲームの世界観もありますから、パターンと言っても限りはありますし、掲載場所も効果が高い面は限られてきます。
森:そうなると、こちらとしてはもっと効率よくユーザーにアプローチできないのかと思ってしまいますし、きっとGlossomメンバーからは「だったら目を引くネタをくださいよ」って愚痴られてたと思います。
白瀧:そんなことないですよ(笑)。
ーーそれはどのように脱却したんですか?
森:いろいろありましたが、当初は独立した関係というか、企画ができたら「じゃあこれでデジタルマーケティングお願いします」みたいな連携の仕方だったんです。それで数値報告を聞いて、あーだこーだ言ったり。しかし、先ほど言ったような状態になった時に、Glossomメンバーから要望があり、「他タイトルの傾向から、この企画にはこういったクリエイティブを制作したいです」と。今にして思うと当たり前の事なんですけどね。それで成果がでてそれから積極的に提案をいただくようになりました。
白瀧:この企画とデジタルマーケティングのかけ合わせはとてもうまくいきました。それからこちらも積極的に企画を提案させていただきましたし、ポケラボ側からも企画策定の途中で「データから見ると、どうするのがいいか」と聞かれることも増えました。
森:『シノアリス』はユーザーさまの熱量が高く、配信開始から4周年を迎えますが、いまだに多くのご意見をいただいています。その期待に応えるために日々、新しい企画などの思案に暮れていた時に、Glossomメンバーから、「もっと上流の企画段階から入らせてもらえませんか?」と意見をもらい、お任せした事がありました。日々の分析の中で気づきがあり、そこを企画に取り入れられればという思いがあったのだと思います。
私たちも日々真剣に企画に向き合い試行錯誤してきたからこそ、そこに新しい視点を追加したことで、ユーザーさまに好評いただける結果となりました。そんな積み重ねもあり、今では企画のプロジェクトマネージャーとして活躍しているGlossomメンバーもいます。
白瀧:今では出向という意識が消えるくらいフラットに仕事をしていますね。もちろん、出向者もWebプロモーションのパフォーマンスにしっかりコミットする必要がありますが、同じ土俵で戦っている仲間が隣で悩んでいる姿を目の当たりにしたとき、「プランニングでなにかできないか」と思ったのがきっかけで意見を出させてもらいました。
Webプロモーションは目標達成に対してプロセスをロジカルに説明できなくてはならないし、結果に対しても細かく振り返ります。ただWebプロモーションの成功可否にも関わる前段の企画などで頼りにされている事も嬉しいですし、何よりユーザーに喜んでもらった事が全体として良い結果に繋がった事が一番の喜びです。
ーーそうして、徐々に今のいい関係を構築されたんですね。具体的に効果が現れた事例はあるでしょうか。
森:いろいろあるのですが、ぱっと思い出すのは『シノアリス』2周年のプロモーションでしょうか。TVCMとWEBプロモーションで連動して「カネかカニか」「カネかカマか」など日替わりプレゼントを出すという、これまでにない企画を行いました。20日間ほど毎日違う広告を出したところ、結果的に1周年を上回る反響を得る結果になりました。
白瀧:CMとWEB広告の20日連動企画は、策定の段階から関わったからできたことだと思います。両方を毎日差し替えるとかなり手がかかりますから、クリエイティブ側は大変だったと思いますが(笑)私たちはそれでも強くやりたいと思って作り上げました。
森:核となるプロモーションのテーマや方針にブレがあるとクリエイティブ側に意図が伝わりにくくなりますが、ポケラボとGlossomが共に一気通貫で企画とWEBプロモーションを行ったからこそ、意図した通りに制作できていると思います。
柴田:今の体制になったことで、コミュニケーションコストや渡せる情報の範囲を考える手間が少なく、やりとりが円滑ですね。機動性の高さはこの取り組みの根本的なメリットだと思います。
独自性の高い「マーケターを育成できる広告代理店」に
ーーここまで伺うとお互いに最高のパートナーですね。Glossom側にはポケラボとの協業で他にどのようなメリットがありましたか?
白瀧:私たちはプロダクトの成功を第一に優先します。出向することでプロダクトにより近い立場でマーケティング活動を行えますし、さまざまな手段も提案しやすく、また実績を出せばナレッジも広がります。
また、基本的に広告代理店ではマーケターを育成できません。プロダクト理解、ユーザー理解、他社の動向研究……などなど、経験しないとわかりにくいことが多いためです。しかし、ポケラボとのような取り組みがあると、Glossomでもマーケターの育成の基礎ができるうえ、考えの広がりや施策などに生かせるのがメリットだと感じています。
プロダクトで実績・経験を積んでいくことで「マーケター」として成長できるのだと思います。
ーーGlossomとデジタルマーケティングの関係性とはどのようなものでしょうか。
柴田:Glossomはナショナルクライアント、非ゲーム会社も含めて広告全般に関わっています。ゲーム領域の外部企業に対してはマーケティングのサポート、グループ内に対しては長期タイトルや新規タイトルのプロモーションをサポートしています。
同じグループでも各スタジオに個性があるので、考え方や価値観の違いを尊重しつつ、デジタルマーケティングのインフラやテックのソリューションを取り入れることで、各スタジオがさらに成長できるよう、“縁の下の力持ち”的なポジションを意識しています。
ゲーム領域は長期タイトル化傾向があり、ゲームマーケティング独特の一定の経験値がある人材のアサインが重要になってきています。Glossomはそうしたニーズに応えられるのが強みだと考えています。営業、制作、運用という広告代理店の基本的な機能に加えて、経験豊富なマーケターを派遣できるのが他社との違いです。
ポケラボ×Glossomで培った経験を糧に更なる高みへ
ーーここまで素晴らしい協業の効果を伺いましたが、逆にデメリットを見越して気をつけているポイントはありますか?
森:ワンチームとはいえ、それぞれ最終目標は違うので、バランスを見てやりとりしています。白瀧さんもポケラボとGlossomでそれぞれ違う目標設定があるのですが、ポケラボの一員としての人格があるからこそ、こちらの事業ファーストで厳しく予算の話をすることもあります。プロがお互い最高のパフォーマンスを発揮できるよう、ベクトルは同じ方向を向くようにしつつも、バランスを大事にしています。
柴田:予算調達の権限や分岐点を自分で探りに行けるので、2軸の目標で板挟みになるのはマーケターにとって良い環境かもしれません。
グリーグループの定量を重視する文化をマーケティングにすべて反映させるのは難しいですが、トライアンドエラーを繰り返しながらそこに挑んでいるところです。
ーー今後の展開について、予定していることや目標を教えてください。
森:『シノアリス』のプロモーションで大切にしているのは「ユーザーの期待値を超える」ことなのですが、組織においては、「付加価値を適切に届ける」組織を作りたいと考えています。
ユーザーが「あっ」と驚く企画を適切なコミュニケーションで届けるために、“これはポケラボ”、“これはGlossom”のように役割を明確に分けずに一体感のあるマーケティング組織をこれからも作っていきたいです。
白瀧:私としては今まで以上に分析力を強化したいと考えています。今の体制でも数値の分析から次のアクションを取れるように動いていますが、分析ツールのテックの理解、刻々と変化する外部環境に対するイニシアティブが弱いので、そこも含めてポケラボだけでなくGAIのマーケティングチームとしてもしっかり解決していきたいです。この協業で得たプロダクト理解、ユーザー理解、他社の動向研究などとともに、もっと自分を高めていきたいです。
柴田:デメリットともしっかり向き合って、そこを強みにしたいですね。グリーグループのゲーム事業のデジマ共通化におけるGlossomのミッションとしては、各スタジオと連携する中で、それぞれカラーは違っても共通項があるので、ポケラボとの座組みで得た良いシナジーをそこでしっかり横展開するのがやるべきことのひとつです。
テクノロジーでマーケティングのインフラを整え、各スタジオの良さと強みをグリーグループ全体のものにしつつ、改善箇所を補える横串の役割を全力でやりたいと思っています。