「ヘブンバーンズレッド」新しい驚きを生み出す組織を目指して

ーお客さまの期待に応え続ける組織づくりで、CEO賞受賞へー

年に一度開催される『グリーグループ総会』では全グループ従業員が集まり、1年間で最も象徴となる活躍をした社員もしくはプロジェクトにCEO賞が贈られます。今回、CEO賞を受賞したのはライトフライヤースタジオの『ヘブンバーンズレッド(以下、ヘブバン)』開発チームでゲームデザイナーを率いる笹川さんです。受賞に対する率直な気持ちや取り組みへの考えを伺いました。


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笹川:株式会社WFS / Wright Flyer Studios本部 / 第2スタジオ部 副部長
2012年に新卒入社した後、コンサルタント業務などに従事。2013年にグループ会社へ出向し、ゲームデザイナーとして『ミリオンブレイブ』、プロジェクトマネージャーとして『不良遊戯 シャッフル・ザ・カード』を担当。2018年からライトフライヤースタジオに所属し、『へブンバーンズレッド』の立ち上げから参画。主にメインストーリーの開発、ゲームデザインチーム全体のマネジメントに携わる。

「新しい驚き」を更新し続けるための組織づくりに奔走

ーーCEO賞の受賞、おめでとうございます!



笹川:ありがとうございます。うれしい気持ちがある反面、とても恐縮な気持ちでいっぱいです。私は大勢いるチームメンバーの1人に過ぎませんし、原案・メインシナリオの麻枝 准さんをはじめ、共に開発運営に取り組んでいるビジュアルアーツさんや、ゆーげんさん、多くの協力会社の皆さまのお力があってこそのヘブバンです。今回も受賞するなら昨年と同様、チームで受賞するものと思っていたのでとても驚きました。

ーー今年1年、笹川さんはチームのなかでどのような役割を担ってきたのですか?



笹川:今年1年に限った話ではありませんが、主にメインストーリーの開発と、ゲームデザイナーのマネジメントを担ってきました。この1年間はライトフライヤースタジオの歴史の中でも急激なスピードで組織拡大を行い、リーダー候補の育成やリーダー層の拡充にも力を入れました。また、事業上の目標を達成するにあたり、開発進行において助けが必要な場面では自らがプレイヤーとして手を動かしてきました。

ーー開発を止めることなく組織拡大を実行されたとのことですが、具体的にどのような目標をもって行動されましたか?



笹川:ライトフライヤースタジオのビジョンと同様、より多くのお客さまに「新しい驚きを届けること」を目標にしてきました。

ーー取り組みの中で苦労したことはありますか?



笹川:今年の4月にリリースしたメインストーリー第四章後編が、特に印象に残っています。これまでのメインストーリーの中で、第四章後編が最もテキスト量が多かったです。リリースを待ち望むお客さまの期待に応えるべく、前回のクオリティを超えた新しい驚きをお届けする為、時間とリソースの制約もある中で、限界に挑戦しながら開発に取り組みました。

ーーその困難をどのように乗り越えていったのでしょうか?



笹川:2つありますね。1つは、日々の「できない・間に合わない・難しい」という課題に対し、各担当者が「これならできる」と思えるように物事の解像度を上げて行動を促すこと。例えば、「できない」を分解してみると、物理的にできないのではなく、「どう進めて良いのかわからない」というケースが多々あるのです。そのような場合、具体的なアプローチを提示すれば、その担当者は動くことができます。もう1つは、先述したように自らが手を動かしながら対応したことですね。

目の前の課題は、優秀なメンバーの集合知で解決へ導く

ーー「一流の仲間を集め一流のチームを作る。」そのために意識して取り組んだことはありますか?



笹川:ゲームデザイナーのリーダー陣が一枚岩になることを意識してきました。ヘブバンチームに所属するゲームデザイナー全員の動きを把握することは難しいです。そのため、それぞれのチームを率いるリーダー同士が毎日積極的に会話する機会を設けています。隣のチームのリーダーが今何を考えているのか、何に悩んでいるのか、そして周りのチームに今何が起きているのか、こういったことを毎日お互いにキャッチアップし、今後起きそうな問題があればすぐに対処するようにしています。
そもそも、チームメンバーは優秀な人ばかりで、それぞれのチームを率いる各リーダーもまた優秀な人ばかりです。そのため、私が1人で解決するのではなく、優秀なリーダーたちの集合知で解決する、そういう風に働きかけることを意識しました。

ーーそれが第四章後編を無事にリリースできた秘訣でもあるということですね。



笹川:そうですね。現場では日々さまざまなことが起こり、状況は目まぐるしく変化します。そのような中でもスピード感を持って開発を推進していくためには、都度最適に対処することが大切だと考えています。

過去の失敗や経験が今のチームづくりに生きている

ーーCEO賞は誰もが受賞できるものではなく、これまでの仕事への向き合い方など日々の積み重ねによるものだと思います。2012年からのグリー人生を振り返って今回の受賞に繋がるような「信念」はありますか?



笹川:「責任を果たす」ことを信念としています。もともと“決めた約束を果たしたい”という想いが強い性格で、目的を達成することが私の責任だと思っています。例えば、第四章後編のリリースが遅れてしまうと事業に悪影響をもたらすだけでなく、待ち望んでくださっているお客さまをがっかりさせてしまうことになります。スケジュール通り、かつ、想像を上回る新しい驚きをお届けするという責任を果たすために、何があっても最終的には帳尻を合わせる、というスタンスで取り組んでいます。

ーー周囲のメンバーも安心して業務に取り組めそうですね。



笹川:メンバーから信頼を得るためにどうすればいいかもよく考えます。その一環として、自分自身ができないことは「できない」と正直に言うようにしています。万が一、自分が抱え込んで形にできなければ、周りに大きな迷惑をかけます。もちろん「こうすれば自分でもできる」という代替案は提案しますが、自分よりも得意な人が他にいれば、いち早くその人に任せた方がいい場合が多いです。ですので、早い段階で「人に任せる・渡す・お願いする」ことを実践しています。その分、自分ができることで相手の役に立つことは、率先してやるようにしています。私自身、個人としてのこだわりよりも、ヘブバンチームという集団として一番良い選択を取っていくことを重視していますね。

ーー今回の受賞に繋がるようなターニングポイントはあったのでしょうか?



笹川:一番記憶に残っているのは、2014年に出向先のグループ会社で取締役に抜擢されたことです。当時を振り返ると、今とは違って全部自分がやるというスタンスでしたし、未熟ゆえに非効率なマイクロマネジメントをしていました。予想外のことがたくさん起こり、日々めまぐるしく変わっていく業界独特の環境下で、周囲に任せる動きを積極的に取らなかった結果、市場競争力があるプロダクトを作ることができませんでした。この経験が、先述した「人に任せる・渡す・お願いする」ことの実践に至ったきっかけです。
現場の最前線に立っている人が、その業務領域において一番解像度が高いです。現場でモノ作りに集中する時間より、マネジメントにかける時間の方が長くなった人間が、当時の現場感覚のまま的外れなことをしてしまわないためにも、信頼できるメンバーに任せていくことが大事だと思います。

ーー当時の経験がプラスに働いた経験はほかにもありますか?



笹川:先ほどもお話したリーダー同士が毎日積極的に会話する場作りにも生きています。当時は毎日30分、役員会議をしていました。ただただ雑談する会ではあったのですが、毎日会話をしているのでおのずと仲が良くなりますし、それぞれの役員が持っている事業への理解も進み、日々どんなことが起こっていて、どんな課題があるかを役員全員が把握していました。もちろん、時にはぶつかり合うこともありますが、“左手で殴り合ってはいるけれど、右手はちゃんと握手をしている”という確固たる信頼関係を築けているように感じましたね。この時の経験が今も生きています。

「新しい驚き」に、再現性はない。高くなり続けるハードルをチームで乗り越える

ーー今もなおファンを増やし続けているヘブバンの、次なる「新しい驚き」に期待しています!



笹川:ありがとうございます!その新しい驚きの源となるアウトプットは、クリエイターが持つその時々の感性と、クリエイター同士の衝突による化学反応から生まれるものだと思います。だからこそ、クリエイターは常に自身の感性と戦っていて、過去の自分をどう乗り越えるかを日々考えています。究極的に考えると、このエンタメ性を担保する部分に再現性はないものだと思います。一方で、再現性を追及することで制作効率や品質の向上を狙える側面もあると考えています。例えば、アウトプットまでの過程におけるチーム編成、制作フロー、会議体の設計など、改善できるところは可能な限り模索していきたいです。

ーー最後に、笹川さんの今後の目標や展望をお聞かせください。



笹川:今回は恐縮ながら個人でCEO賞を受賞しましたが、ヘブバンチームのメンバーは本当に優秀な人ばかりです。今後も優秀なメンバーの個々の力を結集し、新しい驚きをお客さまに届けていきたいです。そのために私個人としては、その時々で求められる新しいスキルや物事への考え方を学び、アップデートしていきたいと考えています。
開発現場では、目の前にある膨大なタスクをクリアすることで精いっぱい。なので私は、現場の第一線で活躍する人が対応できないことを自身の役割として捉え、それを主体的に見つけては解決していく、そんな人でありたいです。