グリーグループの特例子会社であるグリービジネスオペレーションズ株式会社(以下、GBO)。特例子会社とは、障がいのある方の雇用促進・安定を図るために設立され、厚生労働大臣の認可のもと親会社の一事業所と見なされる会社を指します。GBOは2012年に設立され、現在約50名の障がいのある方が働いています。グループ内から委託される業務は多岐にわたり、ゲームやメタバースといった中核を担う事業に関する業務から社員の健康診断・予防接種の取りまとめまで、なんと月に250種類。今回はその一部の業務を、GBOで働く社員の声とともにお伝えします。
まずは、GBOがどのような会社であるか、またGBOが担うグリーグループ内の業務について、マネージャーのお二人に詳しく伺いました。
田村:グリービジネスオペレーションズ株式会社 / 事業管理部 部長
2010年グリーに入社。ソーシャルゲームのプランナー、事業責任者を経て、2019年にGBOへ異動。GBOではゲーム関連の受託業務を担当しつつ、広報や会社運営にも携わっている。
吉川:グリービジネスオペレーションズ株式会社 / 経営企画室 / 人材開発チーム マネージャー
2012年グリーに入社。人事部で制度企画や労務の担当を経て、2023年にGBOへ異動。GBOではグループ横断のヒト・組織情報を扱う受託業務を中心に担当し、GBO内の人事機能も担っている。
GBOってどんな会社?
ーー今年で設立から12年目を迎えますが、GBOが設立された経緯を教えてください。
田村:障がい者雇用の法定雇用率※を満たし、さらに障がいのある社員にとって働きやすい環境を整えるため、特例子会社としてGBOが設立されました。設立した当時は、グリーグループ全体が急成長している時期で、急速な人員拡大をしている最中でした。その中で各会社に障がいのある方を配属するよりは、個々の能力を最大限発揮できるよう、合理的配慮をしやすい環境を別につくった方が良いのではないか、という当時の判断が、特例子会社の設立に至った背景です。
ーーGBOではどんな障がいのある方が働かれていますか?
現在、GBOでは障がい者手帳を持つ方が約50名勤務しています。そのうち、発達障がいの方が8割弱・精神障がいが2割のほか、1名身体障がいがありマッサージ師として勤務されています。マネージャー陣は個々の障がいの診断名を把握していますが、診断名だけにとらわれず、一人ひとりを見て得手不得手を確認し、可能な限り適材適所の業務配置を心掛けています。
ーーその全員がフルリモートで勤務されているのですね。
はい、横浜にオフィスはありますが基本的にマネージャー以外は月1回の任意出社で、あとはリモートで勤務しています。GBOでは新型コロナウイルスが流行したタイミングからフルリモートに切り替えました。その当初は何かあった時に迅速な配慮や連携ができるのか不安もあったのですが、毎日オンラインで朝礼を実施したりチームミーティングの機会を増やしたり、人によっては出社していた時より1on1の頻度を上げるなど、物理出社をしていた時とコミュニケーション量に差がでないよう、会社全体で心掛けてきました。実際、通勤で発生する心身の負担が減ったり、オフィスで必要としていた合理的配慮(音や他者の視線が気になることへの対策など)も自宅では不要になり、出社していた頃よりも体調が安定し働きやすくなったと感じている社員が多いようです。今のところフルリモート体制で心配なのは運動不足でしょうか(笑)。こちらについては毎日朝会後にラジオ体操を導入したり、ゴムチューブをプレゼントして運動するきっかけを作るなど工夫をしています。担うのは月250種の業務
ーー月に250種の業務を委託しているとのことですが、どのような業務が多いのでしょうか?
田村:今行っている業務はすべてグリーグループ内の会社から委託されており、割合としては、ゲーム事業、メタバース事業のサポートが5割、コマース事業やDX事業のサポートが3割、残りの2割がグループ全社に関わるような人事・総務系の業務です。特に最近は、コマース事業やDX事業のニーズが増えていますね。
ーーグリーの中核事業である、ゲームやメタバースではどのような業務に携わっているのでしょうか?
サービス運用に関わるさまざまな業務を受託しているのですが、例えばゲーム内イベントのバナー作成のような画像加工業務や、プロモーション用のプレイ動画撮影・編集、品質管理に必要なデバッグ作業※、ボイスチェック、シナリオチェックも行っています。また、各プロダクトで使用されるアイテムやキャラクター画像の納品物確認や、アイテム名の考案、ツールでの入稿作業、定常的な資料作成などにも対応しています。ライトフライヤースタジオの人気プロダクト「ヘブンバーンズレッド」のプレイ動画を撮影する様子
ーー人事・総務の業務と言うと、どんな業務があるのしょうか?
吉川:例えば、グループ社員が毎年受けている健康診断の設定や再受診勧奨の案内、インフルエンザ予防接種の職場接種対応などがあります。インフルエンザの予防接種は一昨年から対応しており、昨年は初めて東京にオフィスのある12社の社員全員が一会場同日程で接種できるように取りまとめました。
社員からみると注射をするだけですが、加入している健康保険組合によって受診票や請求額・費用処理方法が異なったり、会社によって独自のルールを設けていたところもあったため、本当に同日程でできるのか、どのように案内するのがスムーズなのか等、精査には時間をかけたと思います。
あとは、グリーグループは毎月中途入社の方がいるので、その方々がグリーグループのルールを理解し、すぐにキャッチアップできるよう、コンプライアンスや情報セキュリティなどのe-learningの運用を受託しています。受講対象者のリストアップ、メール案内、進捗確認、未受講者へのリマインド送付等の対応を行います。
その他、毎月の労働時間の集計業務や安否確認サービスへの居住地情報変更を含めた登録確認等も行っています。
- 各プロダクト・サービスに関する市場調査
- ユーザーアンケート集計、分析レポート作成
- インタビュー動画文字起こし
- 行政提出用の人事データの作成(裁量労働制適用等)
- 社内行事(キックオフや従業員向け決算説明会)のカレンダー登録
- 各プロダクト・サービスに関する市場調査
- SNS投稿調査
- SNS運用レポート作成
- 広告レポート作成
- 請求書、支払通知書送付代行
- グリーグループが運営するマッサージルームでの施術及び運営管理
社員の得手不得手を生かし、キャリアの幅を広げる
ーーGBOではさまざまな業務を対応していますが、障がいのある方へのマネジメントで意識していることはありますか?
田村:冒頭でもお伝えしたように、可能な限り得手不得手を生かした業務分担をすることです。「この業務をやってみてどうでしたか?」と1on1でヒアリングをすることでメンバーを理解し、業務アサインのヒントを得ています。業務に取り組んだ感想は、言語化が難しい場合もありますが、様々な角度から質問し、深堀りしていくことで、本質が見えてくることがあります。例えば、ある人にとって苦手だと感じていた業務が、実はその業務のなかのごく一部の作業が苦手だとわかり、そこだけ他の人にお願いすれば、問題なくその業務を続けられるというケースもあったりします。
細かい業務を正確に実行するのが得意な方、クリエイティブな業務が得意な方、大きな業務を一つ渡すよりも小さな案件を少しずつお願いした方がパフォーマンスが発揮できる方など、どの業務がその人に合うのかはさまざまですが、GBOのマネージャー陣は、この業務はもしかしたらあの人に合うのではないか?と、チームを横断し日頃からアサインについて頻繁に話し合っていますね。
吉川:私は昨年GBOに異動したので、自身のマネジメント方法を模索しているところではあります。GBOに来て驚いたのが自分自身のことを客観的に理解している方が多いこと。業務上の得手不得手だけでなく、自身の体調についてもよく理解し、パフォーマンスが落ちそうなど不調なときには自分から申し出てくれる方が多いので、マネジメントする側としてはフォローもしやすく安心感があります。
田村:確かに、GBOでは自己理解の度合いが深い方が多いですよね。自分の得手不得手と向き合うことは苦しい場面もあると思うのですが、それを乗り越え、そこからさらに他者受容の文化に繋がっているのかもしれません。そのため、お互いに得意なところで苦手な部分をカバーしようとする良いチームワークの流れができていると思います。
ーー社員のキャリアアップを考え、取り組んでいることがあると伺っています。
吉川:「スキルバッジ※」のことですね。2023年9月から導入しています。社員のスキル向上が目的ですが、日々の業務の中でもっと成長や達成感を感じる機会を設けたいとの思いがあって始まりました。「バッジ」と名前はついているのですが、物理的なものをお渡ししているわけではありません(笑)。ただ、「資格」というと少し重いイメージがあったので、誰でも気軽に取り組めるようにこの名前にしました。現時点では大きく分けてExcelとPhotoshopの2種類コースがあり、それぞれが初級から応用のように5段階のレベルに分かれています。必ずしも初級から始める必要はなく、ご自身の興味のある動画の教材を視聴したり、練習問題を解くことでスキルを高め、最終的に成果物を提出して担当のスタッフからOKが出れば認定、といったかたちで運用しています。月末の締め会の中で、「今月はこちらの方々が取得しました!」と取得者を紹介もしていまして、皆さん継続して取り組んでくれていますね。
ーー「スキルバッジ」を生かして業務されている方もいますか?
吉川:現状は、担当業務でExcelやPhotoshopを使用している方が取得されているケースが多い印象ですが、今後は、そのツールを使用する機会がなかった方にも、バッジ取得を機に業務で生かす機会が提供できればと考えています。スキルバッジを取得し、そのスキルを業務に生かしている方の声をご紹介しますね。
❝業務の取りまとめ役として、作業シートなどを作成する機会が増えてきたため、関数や表計算の仕組みを勉強してみたいと思い、スキルバッジを取得しようと思いました。当日の作業量を集計したいと思った時に、スキルバッジ取得のために勉強したピボットテーブルが役に立っています。結果、どの作業が多いのか一目で分かり、作業者担当者の割り振りがしやすくなりました。私のつくった資料をマネージャーやメンバーが使い、「業務効率が上がった」「ミスが減った」などの言葉をもらえた時はうれしいですね。❞
障がいとともにGBOで働くということ
GBOで働く社員の声をお届けします。具体的にどのような業務を行っているのか、やりがいやGBOで働く中で感じる成長などを伺いました。
鶴山:グリービジネスオペレーションズ株式会社 / 事業管理部 / 事業管理第1チーム
2014年にGBOへ入社。GBOでは、主にグリーグループの子会社が運営するプロダクトのマーケティング用動画の編集などを担う。
また、進捗を管理し業務効率を上げるために、必要な情報を一元化して、他のメンバーも使えるようなフォーマットを作成しています。私はExcel関数が得意なので、自分に合った業務で事業に貢献できるのは非常にうれしいです。また、さまざまな案件を担当することで工数予測ができるようになり、急ぎの依頼が複数あっても、うまく組み合わせながらスケジュール通り納品できるようになったことが成長と感じています。
私はGBOに入社し10年になりますが、業務の幅が広いことやリソース管理、体調による休みの調整についてもマネージャーと連携がとりやすいことで、自分らしく働けていると思っています。
小林:グリービジネスオペレーションズ株式会社 / 事業管理部 / 事業管理第5チーム
2022年にGBOへ入社。GBOでは主にグリーのDX事業を担う子会社のSNS投稿調査やリワード広告調査の業務を担当している。
コミュニケーションは今後も課題として捉えており、普段の業務の中で自ら進んで業務フローの見直しを提案したり、伝えるべき情報を自分の言葉で上手にアウトプットできるように発信力を鍛えていきたいです。
GBOの未来
最後に、田村さんと吉川さんに今後のGBOの抱負を伺いました。
田村:GBOに入社して長い方だと10年目を迎える社員も増えてきているので、グリーグループへ事業貢献できる状況を維持しながら、働きがいのある会社づくりにも力をいれていくことが今後の目標です。具体的には、AIの進化にも適応しながらもっともっと業務の幅を広げ、社員が積極的にチャレンジできる環境をつくっていきたいですね。
想像以上にさまざまな業務ができる会社ですので、グループの他の事業の方々の役に立てるように、GBOで担える業務は吸収していきたいと考えています。
吉川:私がGBOで働いてみたいと思ったのも、人事をやっていた時に「この業務を他の人にお願いできたら、別の業務が進むのに」と思うような業務を請け負ってくれるというところに興味があったからです。まだまだグループの中で人の手が必要な箇所はあると思いますので、グリーグループの事業がより成長していけるような環境をGBOの手で整えていきたいですね。