グリーグループでは本社の人事が各子会社に出向し、経営者の近くで事業を支えるHRBP(HRビジネスパートナー)という組織があります。
ライブエンターテインメント(現:メタバース)事業を担うREALITY社では、2020年10月の社名変更に伴い3つのバリューを新たに定めました。このバリュー策定はHRBPが中心となり、社員や経営陣の意見を取りまとめ、組織活性の一環としても行われました。
HRBPが担う役割とは何か。どういった思いで事業をサポートしているのか。REALITY社の二人のHRBPに話を聞きました。
斧(以下、おのかよ ※1):REALITY株式会社 人事チーム マネージャー(グリー株式会社 人事部 HRBPチーム 所属)
グリー入社後、経営企画部にて海外ゲームスタジオの立ち上げなどを経て、現在は人事部 組織開発チームのマネージャーとREALITY社 人事チームのマネージャーを兼任で務める。
松田(以下、ユリナ ※1):REALITY株式会社 人事チーム(グリー株式会社 人事部 HRBPチーム 所属)
グリー入社後、人事部で新卒採用、キャリア採用、社内活性等の経験を経て2018年よりREALITY社の人事を担当。
経営戦略と人事戦略をシンクロさせる新たな人事の役割「HRBP」
ーーREALITYのアバター姿、可愛いですね!普段はどんな業務をされていますか?
おのかよ:私は本社の人事も兼務しているのですが、REALITY社のHRBPとしては、人事業務全般を担当しています。給与、労務や組織活性、制度策定など、役割は多種多様ですね。ベンチャー企業の人事業務を想像してもらうのが分かりやすいかもしれません。給与や制度周りは本社の人事と連携していますし、基幹システムなどは全グループで統一しているのでその辺りの管理はしていませんが、一つの会社として必要な人事機能はほとんど全て管轄内です。
ユリナ:私はREALITY社のHRBPとして主に採用を担当しています。日々の採用面接や、採用媒体で記事を書いて発信したり、バーチャル会社説明会を実施したりしながら、REALITY社のさらなる成長のために未来の仲間探しをしています!
ーーお二人はREALITY社のHRBPとしてご活躍されていますが、そもそも「HRBP」って何ですか?
おのかよ:HRBPはHRビジネスパートナーの略で、「経営人事」とも言われています。経営戦略と人事戦略を繋ぐ存在として昨今HR業界で注目されている役割です。先日、CFOの大矢がHRBPについてのオンラインカンファレンスで登壇したのですが、グリーグループにおけるHRBPについてその時の資料にまとめています。
おのかよ:上記の図にある通り、人事領域の4象限(※2)において、「管理のエキスパート」は本社人事、それ以外はHRBPが担うべき、というのがグリーが考えるHRBPです。理由は、「戦略パートナー」、「変革エージェント」、「従業員のチャンピオン」という3つの役割において、事業現場との距離が肝になるからです。一般的に、組織が大きければ大きいほど人事と現場との距離は遠のきますが、グリーのHRBPは各子会社の経営者の近くで事業戦略に関わっているので、いち早く課題をキャッチし、経営者や社員との信頼関係を築くことができると考えています。
ーーなるほど。「戦略パートナー」として人事が担う役割は、具体的にはどのようなことなのでしょうか。
おのかよ:事業戦略に基づいて人事戦略を構築するのが「戦略パートナー」の役割です。例えば、私はREALITY社の経営会議に毎週参加していますし、代表取締役である荒木とも毎週定例会議を行なっています。ものすごいスピードで変化する事業、市場をいち早くキャッチして、事業成長のためにどのような人材を採用すべきなのか、あるべき組織の姿から足りないことは何なのか、社員のモチベーションは良い状態なのかなどをタイムラグなく捉え、考え、施策に落として実行するのがHRBPの仕事です。会議のあるなしに関係なく荒木をはじめとする経営陣とは密に連携し、様々な意思決定を共に行っています。
ーーユリナさんは本社で新卒採用やキャリア採用も担当されていましたが、HRBPという立場になり何か違いは感じますか?
ユリナ:事業の成長によりダイレクトに貢献したいという思いからHRBPへ異動したのですが、本社の人事をしていたときよりも、経営陣や社員と密に連携しながら共に事業づくりをしている感覚があります。特にREALITYのような新しい事業においては、必要な人材や組織のあるべき姿がスピーディーに変化していくので、採用に限らず様々なアプローチで介在価値を発揮できるよう心がけています。
成功体験がないと、バリューは腹落ちしない。最適なタイミングを待っていた。
ーー10月1日の社名変更に伴いバリューが策定されましたが、なぜこのタイミングだったのでしょうか。
ユリナ:REALITY社(旧Wright Flyer Live Entertainment)が設立されて、約2年が経ちますが、これまでにもバリュー策定の話が出たことは何度かありました。そのたびに「まだ今ではない」と、最適な時期を見計っていて、今回のタイミングになりました。
おのかよ:荒木のインタビューにもありましたが、バリューはかっこよさや奇抜さではなく、社員がどれだけ納得感を持てるかが大事だと思うんです。バーチャルライブ配信アプリ「REALITY」が多くのユーザーさまに受け入れられ、バーチャルライブ・イベントを展開するREALITY XR cloud事業も立ち上がり、そこで働く社員に「こう行動すればうまくいくっぽい」という実感が生まれた。そして皆がそれをREALITY社を代表する行動として語れるようになった。それがこのタイミングであり、今回の決断に至った背景でした。
ーー実際にどのようにバリューを作っていったのですか。
おのかよ:何よりも社員に納得感を持ってもらうために、ボトムアップで作るということを決めて、2回のワークショップを実施しました。ワークショップ1では社員全員に意見を出してもらい、そこで出てきた要素を、ワークショップ2で経営陣がまとめていきました。1ではこれまでの成功を振り返り、2では今後成功するために必要なことは何かを考えるというアプローチで設計をしました。
ーーワークショップの内容はどう決めていったのですか。
おのかよ:自分だったらどういうお題だと答えを出しやすいかを考えて作りました。ワークショップ1では、REALITY社での成功体験を踏まえて大事だと思う行動を各自考えてもらいました。自分の経験から振り返ることで本当のボトムアップを実現しようと。あとは、せっかく社員全員の時間を使わせてもらうので、皆が褒められたり、気持ち良い時間にしたいと思ったんですよね。
ユリナ:私もワークショップに参加しましたが、とても気持ち良い時間でした。REALITY社で自分が今までしてきた仕事を振り返り、うまくいったことについてなぜ成果を出せたのか、どんな思いで、どんな行動をしていたのかを言語化し、皆にシェアしました。全員が自由に「自分語り」をしているような時間でしたが、「REALITY社はどんな会社ですか?社員はどうあるべきですか?」と問われるよりも、自分ごととして考えることができましたし、皆が日々どんな思いで仕事をしているか聞く機会もなかなかないので、新鮮で楽しかったです。
ーーワークショップの中で特に印象に残っている出来事などはありましたか。
ユリナ:数グループに分かれて実施したのですが、各回で同じようなワードがたくさん出てきたことに驚きました。また、数ヶ月前に入社したばかりの新卒社員が議論をリードしていたり、役職や立場に関係なく全員がフラットに会話していたことが印象的でした。
既存業務の垣根を超えて「なりたい自分」をサポートする。
ーーそもそもバリューとは、なぜ大事だと思いますか。
おのかよ:バリューは組織を束ねる上で必要なものだと思います。社内で大切にしている指針が共通言語化されることで、コミュニケーションコストが低くなり、よりスピード感を持った意思疎通が図られます。また、課題や迷いがある際に立ち返る拠り所にもなると思います。例えば、「事業成長にこだわる」というバリューは、ワークショップ2で議論する中で組織として譲ってはいけないことだとして意思を持って決定しました。議論の内容は、「自分たちが作りたいものを作るのか、それとも世に求められるものを作るのか」という深いものでした。その議論の過程を経ているからこそ、対極の問いやジレンマが発生した際に、バリューに立ち返ることで選択すべき行動が見えてくることがあるはずです。
ユリナ:REALITY社で表彰しているMVPも、バリューを最も体現している人・プロジェクトという選定基準にしています。どういう姿勢や行動が評価されるのかが明確になるのと、採用における重要な指針にもなり、よりカルチャーフィットの高い組織を作ることができると思います。
ーーバリュー策定から少し経ちましたが、社員に浸透していると感じますか。
おのかよ:浸透を目指して、全社朝会やキックオフ会でもバリューに沿った企画を盛り込んでいます。普段の会話の中でも、徐々にですが「終わりなき挑戦を楽しもう!」とか「愛だね」とか皆に使われてきていますね。
ユリナ:社内コミュニケーションツールのSlackでもバリューの文字スタンプが日常的に使われていますね。「REALITY」のエンジニア全員でバグ(不具合)の修正をした「終わりなき挑戦プロジェクト」という取り組みなどからも、バリューを体現しようという意識を感じますし、社員の皆に少しずつ親しまれているなと思います。
浸透は時間がかかるものなので、1、2ヶ月で測れるものではないと思いますが、現時点で社員の皆がバリューに関心を持っていて、日々意識の片隅にある、というのは良い状態だと思っています。
ーーユリナさんはREALITY社設立初期の頃からHRBPとして携わっていますが、組織の雰囲気などに変化は感じますか?
ユリナ:会社の規模は少しずつ大きくなりましたが、根本の雰囲気はあまり変わってないかもしれないですね。私がREALITY社に参画した当時驚いたことでもあるのですが、皆本当にプロダクトやユーザーさまへの愛があって、飲み会の場でもずっと「REALITY」の話で盛り上がっているんです。コロナ禍で飲み会は減りましたが、その雰囲気は今も変わらず良いなと思います。
ーーどんな話で盛り上がっているのですか?
ユリナ:「REALITY」のアプリをもっとこうしたい、こういう機能があったらいいんじゃないか、という会議の延長のような話から、好きな配信者さまや最近の推しのVTuberさんの話などですね。
2年前は、バーチャルライブ配信アプリそのものが新しく前例もなかったので、未知の領域を皆で手探りで開拓しているような感覚でしたが、ユーザーさまも増え、最近は日本だけでなくさまざまな国の方に遊んでいただいており、自分たちの思い描く「なりたい自分で生きていく」世界に少しずつ近づいている手応えがあるので、そういった意味での雰囲気の変化は感じます。
おのかよ:会社の雰囲気で言うと、お互いを尊重しあえる文化が素敵だなと思っています。ビジョンが浸透していることもあり、「なりたい自分で生きて」いきたい人、もしくはそのような人たちを応援したいと心から思う人が集まる組織です。なりたい姿はそれぞれ異なりますが、お互いに尊重し違いを認め合っているからこそ、自分のなりたい姿を目指せる安心感がある環境だと思います。逆に言うと、なりたい自分には人を尊重しないとなれないと思うんですよね。それが自然とできている組織だな、と思います。
ーー最後に、今後の目標を教えてください。
ユリナ:まずは「REALITY」が世界中の多くの方に愛されるサービスになるよう、採用や組織づくりを通じて事業の成長を支えていきたいです。そのために日々の業務では「REALITY社のファンを増やす」ということを大切にしています。社員にとって誇らしい会社をつくり、社外の方から見てもに魅力的な会社でいられるよう発信し続けたいと思います。
おのかよ:HRBPとして事業貢献するためには、既存の人事業務の垣根を自らもっと超えていかなければいけないと思っています。どんな事業においても、「人」が原因で滞ることはたくさんあります。何か上手くいっていない時に、人事の視点や人脈やコミュニケーションスキルを使って、その問題を紐解き、例えばチーム同士の言い分や状況を、間に入って繋ぐことでプロジェクトを円滑に進めるサポートをする。そこまで事業現場に踏み込んでやっていくことこそが、「変革のエージェント」として求められている役割だと思います。
私自身の目標は、「人がなりたい自分で生きていけるよう、サポートできる人材になる」ということです。実際にコーチング(※3)の資格を取得し勉強も継続しているのですが、現場で生じる全てのコミュニケーションが将来のスキルに役立つと思って、今も業務に取り組んでいます。
ユリナ:そうですね。手段に縛られることなく、私たちなりの事業貢献を考え続けていきたいです。
ーーお二人とも、ありがとうございました!
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