『アナザーエデン 時空を超える猫』や『消滅都市』など、 グリーグループを代表するゲームの制作にかかわってきたWFS。昨年よりあらたに取り組み始めたデジタルソリューション事業について、立ち上げからの振り返りと、今後の展望などについて、事業をリードする二名に語ってもらいました。
春山:株式会社WFS Studio本部 Studio 3部 部長
GREE Platform向けの内製プロダクトの開発・運営を担当し、大規模プロダクトのプロデューサーを担当。その後WFSに移り、新規領域の事業開発とプロダクト開発・運営を担当し、現在に至る。
柿沼:株式会社WFS Business Development部 部長
GREE Platform向けの国内外パートナーリレーション業務を担当し、Platform事業の急拡大に貢献。2015年よりパートナーリレーションを担当する部署でシニアマネージャー、部長を歴任しパートナービジネスを推進。その後WFSに移り、2020年1月より現職。
嘘をつかない市場に、真っ向勝負を挑む
ーー事業を始めてから約1年が経ちました。改めて、WFS社で行っているデジタルソリューション事業についてどんなことやっているのか教えてください。
春山:WFS社のデジタルソリューション事業は、テクノロジーをベースとしたクリエイティブカンパニーとして、ゲーム・コンテンツビジネスから派生し、クライアントさまが描くプロダクトの企画・開発をさせていただいている事業です。我々が長年ゲーム開発で培った技術力やノウハウを生かし、新しい驚きをユーザーさまに届けられるように心がけています。
柿沼:これまでの取引先には、HTML5ゲームや、非ゲームのクライアントさまがいらっしゃいます。HTML5ゲームではLINEさまとゲームを制作した実績があります。非ゲーム領域でもPreferred Networksさま、講談社さま、オムロンソーシアルソリューションズさまなどとの取り組み実績があります。
実績企業さま一例
ーー日本全体では新型コロナウイルス感染症の影響が出ていますが、そんな中で立ち上げから一年を振り返ってみていかがでしたか?
春山:うまくいったこともあれば、課題となるものもあり、事業の将来性について「見えてきたな」というのが実感です。幸い、企業さまとのやりとりについては、コロナ禍の影響もほとんどなく、Zoomなどを使ったオンラインミーティングで密に連絡を取っていきました。むしろ、物理的な距離が関係ないので、遠方や海外の企業さまとも効率良くやりとりができるというプラスの要素もありました。
柿沼:さらには「市場は嘘をつかない」ということも感じられましたね。自信を持って徹底的に取り組んだものは、どれも高い評価を得ることが多かったです。一方、他社とコンペになるような案件の中には、自分たちの強い分野だけではクライアントさまの要望全てを叶えられず、契約までたどり着かない場合もありました。そういう経験を重ねてきたことで、自分たちの強みに特化し、他社との差別化を図る意識は強くなったと思います。
ーー新規開拓についてはどのように営業展開していったのでしょうか?
春山:人を介してお話をいただくケースは多いです。また、去年この『6deGREEs』で紹介されてからグループ内にも広く知られるようになったので、引き合いの相談が来るようにもなりました。話を聞いてみると、今までも各部署で「こんなことはできませんか?」といった問い合わせがあっても、ソリューションに特化した事業がなかったことから断っていたとのことで、そういったニーズをすくい上げる場にもなると分かりました。
柿沼:グリーやWFSはIT業界の中でもものづくり文化を大事にしている会社なので、そこを評価いただいてお話が来ているケースも多いです。
「ユーザーとクライアントの夢をカタチにし、社会の革新に貢献する」
ーー発足から半年というタイミングで事業部の方針を策定されていますが、そこに込めた思いなどをお聞かせください。
春山:事業方針は事業開始から1年くらい経ったら検討するつもりでした。ところが、WFSが毎年行っている経営合宿で「事業性を超えて、なぜこの事業をやるべきなのか、大義を決めた方が良い」という意見がありスタートから6カ月というタイミングで検討することになりました。実際、「これは成功する」という事業への確信も掴み始めていたので、部内だけでなくグリーグループ全体にもきちんと説明できるよう、方針としてまとめる必要もありました。
ーー「これは成功する」という確信をつかんだのは、何か理由があったのでしょうか?
春山:「クオリティに妥協しない」という自分たちの強みがはっきりしたことですね。自分たちの強みのある分野で相談や提案をしていくと、ご縁につながりやすいという状況が見えてきたのです。しかも、それを支えてくれる仲間もすごく優秀で、そんなメンバーがどんどん増えてきたことから、事業の歯車が完全にかみ合ってきたと感じていました。
柿沼:そうですね、グローバルに展開している大手IT企業から「これはおもしろい」と評価されてアプリ開発が始まったこともありました。「デジタルソリューションを始めます!」と言い出しただけでなく、アウトプットした実際のモノや結果が伴いはじめたことで、グループ内でも次第に注目されるようになってきました。
ーー事業の方針はどういったところに気を配って落とし込んでいったのでしょうか?
春山:WFSは「to C」、いわゆる対消費者のサービスをずっと頑張ってつくってきて、ユーザーとの対話も行ってきた会社という自負もあります。その上デジタルソリューションとして開発するプロダクトは、ユーザーが楽しいと思うエンタメ的な体験を届けるだけではなく、誰かの人生を後押ししたり、社会をよりよく動かしたりするような、ゲームとは少し異なる要素を持ち合わせています。そういったことから、この事業の方針には「社会」というキーワードを入れる必要性を感じ、テクノロジーカンパニーであるWFSとして、「社会の革新」に貢献していくことが大事になる、そう考えました。
目の前にそびえる問題や課題にも、グループのスペシャリストたちとともに対処していく
ーーゲームやIT以外の一般企業と組むことの難しさなどはありますか?
春山:普段の環境が異なる以上、予期せぬことも起こったりします。例えば認識の齟齬から、開発途中で把握しきれなかった新たな提案を受けるケースもありました。そういったことがないよう事前の資料共有やコミュニケーションを丁寧に行うことを心がけたり、時にはモック開発したりして事前にすり合わせを行い、課題があった場合は速やかにコミュニケーションを取って、両社の認識を合わせています。少しでもよりよいサービスを世の中に届けたい思いはクライアントさまと同じなので、難易度がある部分についても前向きに取り組んでいます。
ーーそこで得た経験や知識はグループ全体で共有しているのですか?
春山:もちろんです。グリーグループではノウハウを共有する文化がかなり強く、過去のゲーム開発も含めて、基本的に資料で残す文化があります。そういう意味ではノウハウはかなり蓄積されていると思いますね。加えて、周りにテクニカルなことをすぐ聞ける百戦錬磨の達人たちがいるので、過去にないトラブルが発生してもその都度助けてもらっています。
ーーやればやるほど知識やノウハウ、経験が積み上がっていく環境なんですね。
柿沼:WFSらしさの一つに仕事への関わり方があります。まず、相手に対してちゃんと価値を提供できること、そしてそこから自分たちも何かを学ぶという姿勢です。「単価いくらで、つくって、おしまい!」みたいな仕事では、お金にはなっても知識や経験といった自分たちの資産になりません。開発がうまくいかなくても、「これは学べた」といえれば、次に同じようなケースが出てきたとき、成功の確度をあげることができます。
ーーこれからのデジタルソリューション事業は、どのように展開していきたいですか?
春山:この1年はデジタルソリューション事業として無我夢中で駆け抜けたところに、意味があると思っています。
今後は1つでも多くのサービスを世に届けたいと思っていますね。以前はこの領域で国内ナンバーワンを目指したいと思っていた時期もありましたが、クライアントさまに満足してもらえることのほうが大事だと気づき、少しでも技術力を上げて取引を増やし、クライアントさまから「ぜひWFSでお願いしたいです」といってもらえるようにしたいです。
柿沼:さらに成長していくために「好循環を繰り返す」組織にしたいと思っています。この業界って不思議なもので、1個がうまく回り始めるとそれに準じてほかのこともついてくると思っていて。もちろんその逆パターンもありますが、コストやスケジュールに余裕のある案件だと実務部門もきっちり仕事ができ、法務や経理も柔軟に対応できます。そこで生まれた余力を次の案件に繋げられると、再びいい案件に巡り合う確率も上がり、結果として事業そのものが好循環を繰り返していきます。
ーー事業をうまく回すためには、社内はもちろんグループ内外のコミュニケーションもとても大事になりますね。
柿沼:一見すると難しそうな要望でも、グリーグループにはさまざまな経験を持った優秀な人がいるので、他の部署とコミュニケーションを取ると意外な突破口が見つかることがあります。
春山のいいところはポジティブに物事を捉えるところで最初から否定はしないんです。「よさそうじゃん」と一度受け止めて、そこからコミュニケーションを取って相手の情報を掘り下げて、実現可能かどうか判断します。 まずはポジティブに、「どうやったらできるか」と受け止め、そこから進めていくのが重要 だというのがこの事業で学んだことですね。