次世代のビジネスプラットフォーム、BtoBメタバースの可能性

2023年3月1日、グリーはメタバース事業を強化するため、REALITY株式会社、REALITY Studios株式会社、REALITY XR cloud株式会社、BLRD PTE. LTD.の4社体制になりました。今回は、法人向け事業を展開するREALITY XR cloud株式会社の代表取締役社長に就任した春山さんに、会社設立の意義やこれまでの実績、今後の展望などを聞きました。

春山 一也:REALITY XR cloud株式会社代表取締役社長
グリー内製ゲームの開発運営プロデューサーを経て、横断的に10タイトル200名規模のゲーム運営事業部 部長にて全社利益に貢献。ウェブ・アプリ・エンタメのB2B2C事業部門を立ち上げたのち、現在のメタバース領域を中心とした法人向け事業部責任者として事業を推進。事業を子会社化したREALITY XR cloudの代表取締役社長に就任。

法人向けメタバース事業専門会社として独立

ーーREALITY株式会社内の法人向け事業だったREALITY XR cloudを子会社化した背景を教えて頂けますか。



春山:REALITY XR cloudはあらゆる仮想空間内で行われるバーチャルイベントを実現するためのクラウドソリューションとして2019年10月にサービスを開始しました。これまでにHIS様、ビームス様、三越伊勢丹様等、大手企業様のメタバース進出を共に推進し、提供したメタバースに合計約4,200万人が訪れるソリューションにまで成長しています。私自身は2022年1月より担当しましたが、この1年で開発組織も強化され市場での競争優位性も獲得できたと感じています。いずれは子会社化したいと考えていましたし、グリーのメタバース事業を強化していくためにも市場が伸びている今が独立のベストなタイミングと判断しました。

ーー社内事業から子会社として独立することでどのような変化があるのでしょうか。



春山:基本的な部分はこれまでと同様ですが、法人向けメタバース事業専門会社という立ち位置を明確にすることで、ブランディングやプロモーション活動がしやすくなります。既存の取引先や社会からの期待値も上がっていくので、そうした期待に応えていくことで自らの市場価値を高めていきたいですね。独立したことで権限と裁量の幅が広がると同時に、責任も増えます。変化の激しい事業ですが、迅速かつ適切な判断と機動力を発揮して期を逃さず前進していきたいと思っています。


ーー改めて事業内容を伺えますか。



春山:BtoB 事業で、クライアントの要望に応じてメタバースや XRを活用したプロモーションやイベント、アバターやプロダクトの制作などを手掛けています。自社のスマートフォン向けメタバース「REALITY」を活用した新体験プロモーションや展示会、バーチャル支店、交流会、デジタルツイン、メタバース広告、アバターショップ販売など。ほかにも、ホワイトレーベル型のプラットフォーム構築など、幅広いソリューションを提供していきます。

リアルではできない体験を実現し、リアルと接点を結ぶ

ーー最近の取り組みをいくつかお聞かせいただけますか。



春山:三井不動産様、東京ドーム様と一緒に取り組んだのが「東京ドームワールド」です。アプリ「REALITY」のワールド上に「東京ドーム」を模した空間を作り、ライブステージを用意してプライベートなライブ配信の場やフォトスポットとして楽しめるというものです。実際の東京ドームに近づけるだけでなく、メタバースの世界だからこそ可能な演出を多数盛り込みました。例えば、誰もがセンターステージで歌って踊れるだけでなく、ライブステージを盛り上げるライトアップ演出をすることができたり、東京ドームの上空にクジラが浮遊していて一緒に泳ぎながら歌うファンタジー映画のような体験ができたりします。アプリ「REALITY」内でも複数の関連イベントを開催し、上位入賞者には「東京ドームワールド」で行ったライブをYouTubeで生配信するなどの特典を用意しました。三井不動産様からのリクエストは、アプリ「REALITY」内の場の提供にとどまらず、自社の事業とどのようにシナジーをつなげていくのかがポイントでしたので、三井不動産グループの運営する施設やECサイトとの連携なども行い、延べで420万人が来場しました。

ーー東京ドームと三井不動産、メタバースの世界だからこそユーザーとの接点をつなげられるということでしょうか。



春山:その通りです。アプリ「REALITY」は、日常生活に溶け込んだサービスとして多くのユーザーに利用していただいています。僕が考えるに、ユーザーは、毎日何時間もそこで暮らしているかのような感覚を持っているので、そこに東京ドームのような特別な空間が出現すれば面白そうだと期待してくれますし、参加できるイベントがあれば自然と活動するようになるのではないかと考えているのです。いかにユーザーの興味を引き付ける場を提供できるかが重要で、それがうまくできればUGC(ユーザー生成コンテンツ)によって自然に場が盛り上がります。三井不動産様からもさまざまなアイディアが出され、結果的に東京ドームの価値を上げて、運営施設やECサイトの認知・利用向上に向けた実証実験にもつながるという、リアルとメタバースをつなぐとてもいい取り組みになりました。

ーー「東京ドームワールド」と異なるタイプの事例もご紹介いただけますか。



春山:違ったタイプのものだと、食品メーカー様の新商品の発表イベントの取り組みがあります。メタバース上の会場に全国の営業所のスタッフが集まり、取引先を招待して新商品発表会を行い、その場で商談もできるというものです。現実世界だと全国のスタッフを一同に集め、さらに取引先にも集まってもらうのはなかなか難しいと思いますが、メタバース上では容易にできます。PR したい商品を大きく見せるなど、リアルではできないアピールの仕方や体験を生むことができ、先進的な取り組みに積極的な企業というブランディング効果も得られます。メタバースは1回の投資額が大きいと思われがちですが、リアルな会場を年に何度も借りてそこに何十人ものスタッフを集めてイベントを開催するより、手間もコストも抑えることができます。招待された側も移動時間が不要でどこからでも参加することができ、こうした利用の仕方も今後増えていくと考えています。

ーーリアルで見たり聞いたりできないものを、先行して手軽に体験できるのはメタバースならではですね!



春山:そうですね。その特徴を活かした事例がJR大阪駅(うめきたエリア)のメタバース化です。現在、大阪駅(うめきたエリア)は大規模な再開発が進んでいて、新たに開業した地下ホームや新改札口には多くの新技術が導入されています。それをメタバースで再現しているのですが、スマホのメタバース上でもしっかり体験することで実際に行ってみたくなるような仕掛けをたくさん盛り込んでいます。

漠然とした要望を形にし、成果につなげるノウハウがある

ーー企業や行政のメタバースに対する関心が高まっている中で、関心はあってもメタバースに踏み込めないと考えている企業も多いように思いますが、その点はいかがでしょうか。



春山:メタバースに進出したい、活用したいという企業は確実に増えていると感じています。やり方次第でチャレンジできる方法はいくらでもあるので、まずはご相談いただきたいですね。現状では漠然としたイメージだけを持って相談に来られるケースも多いのですが、それでも全く問題ありません。しっかりとヒアリングをすることで、目的や求める成果、どこで困っているのか、何に迷っているのかを明らかにしていき企業様に合った施策をご提案しています。メタバースに挑戦したいという企業をサポートするのが僕らの役目なので、お気軽にご相談いただけたらうれしいです。

ーーひとつのワールドを作るのにどれくらいの期間が必要なのでしょうか。



春山:規模や内容にもよりますが、ご相談を受けてからリリースするまで3ヶ月前後は必要です。とはいえ、とにかく早く、できるだけコストも抑えたいというご要望もあるので、低予算で1~2ヶ月で作れるようなパッケージの準備を進めています。お試し的な取り組みで、実際にメタバースのユーザーがどのくらい存在し、そこでどのような反応が得られるかを実感していただくことで本格的な取り組みにつなげていきたいと考えています。

拡大するメタバース市場に新たなソリューションを提供する

ーーREALITY XR cloudの強みはどのようなところでしょうか。



春山:アプリ「REALITY」という成長し続けている自社のプラットフォームを活用できるという点と、Z世代を中心に多くのユーザーを獲得しており、海外ユーザーも多いという点です。多くの企業にとって従来のアプローチではリーチしづらい層に対してもしっかりアピールすることができ、今後のインバウンドに向けたPRも効果を発揮します。


ーー海外のクライアントも視野に入れているのでしょうか。



春山:もちろん考えています。メタバース関連のイベントがうまくいっている事例は国内の方が豊富にあり、海外企業のニーズが本格化するのはこれからだと思いますが、グローバルに対応できる準備を整えています。

ーー採用強化もされるのでしょうか。



春山:市場拡大のスピードを見極めながら事業規模も拡大していくつもりなので、市場のニーズにしっかり応えていくためには新たな人材を投入していく必要があります。私たちのビジョンに共感し、メタバースの世界を広げていきたいと思っている方はぜひこちらの採用のサイトを覗いてみてください。

ーー今後の具体的な目標があれば教えていただけますか。



春山:まずは、REALITY XR cloudというブランドを認識してもらうのと同時に、世の中にメタバースの価値を広めていくことが我々の役割だと思っています。そのためにもより多くのクライアントと取引していきたいですね。プロモーションやイベント以外にマネタイズできる新規事業として取り組みたいという企業も増えているので、そうしたニーズにもしっかり応えていきます。

ーー最後に、ご覧いただいている方にメッセージをお願いします。



春山:Z世代にとってメタバースは日常の一部であり、この市場はさらに拡大すると確信しています。現在のユーザーはZ世代中心ですが、TwitterやLINEがそうであったように新しい SNS として関心を持つ人が増え、30〜50代の利用者も徐々に増えていてユーザーの年齢層も拡大していくはずです。そうした市場において、アプリ「REALITY」という自社のプラットフォームがあり、豊富な実績とそこで蓄積してきたノウハウを持つ僕らの事業は間違いなく成功軌道に乗っています。“メタバースにチャレンジしたいが失敗はしたくない”、“確実に成果を出したい”という企業様、また、メタバースやXR活用のアイディアをお持ちの企業様は、ぜひお声掛けください。ともに、新時代のメタバースをつくりあげましょう。