グリーではメタバース事業を強化するために組織再編を行い、2023年3月1日よりREALITY株式会社、REALITY Studios株式会社(以下、REALITY Studios)、REALITY XR cloud株式会社、BLRD PTE. LTD.の4社体制になりました。その中で、VTuber事業の担い手となるREALITY Studiosでは積極的なVTuberオーディションを行っています。先発企業が存在する中、REALITY Studiosがどのようなビジョンと戦略で勝ち抜いていくかを聞きました。
杉山綱祐:グリー株式会社 執行役員/REALITY Studios株式会社 代表取締役社長
2012年グリー株式会社新卒入社。2019年にグリー執行役員に就任。経営企画部部長として経営戦略の策定を主導。2023年にREALITY Studios株式会社を立ち上げ、代表取締役を務める。
高い評価を得ているVTuber事業の強化を目的に、REALITY Studiosを設立
ーー最初に、REALITY Studiosの事業内容について詳しく教えてください。
杉山:REALITY StudiosはVTuberのマネジメント・プロデュースをする会社です。もともと、スマートフォン向けメタバース「REALITY」を筆頭にグローバル展開を進めてきたREALITY株式会社では、事業の1つとしてVTuber事業を手掛けていました。2018年の立ち上げ以降順調に拡大しており、「KMNZ」、「VESPERBELL」などといった、高い評価を得ているVTuberが所属しています。このVTuber事業をより強化するために分社化したのがREALITY Studiosです。
ーーVTuber市場の拡大が今後さらに見込めるということですか?
杉山:そうですね。日本的なアニメーションやキャラクターを受け入れる土壌が、グローバルで伸びていることが重要なポイントです。例えば、1ユーザーとしてアプリ「REALITY」を開くと世界中のユーザーがさまざまな言語で交流している様子が見て取れます。実際に約8割が海外のユーザーです。その一因としては、いわゆる動画配信サービスが普及したことにより日本のアニメに触れる機会が増えているからだと推測できます。また、誰でもリアルタイムで配信が可能な今、コミュニケーションのリアルタイム性が加速しています。このコミュニケーションのリアルタイム性と、日本的なキャラクターで配信したい、もしくは見てみたいという人が増えているというのが基本的なトレンド感ですね。先行して取り組んでいる他社の実績も伸びているようです。もちろん浮き沈みはあるかもしれませんが、伸長し続ける市場だと断言できます。
タレントの自主性を尊重しながら、ともに成長していく
ーーREALITY Studiosの具体的な業務内容を教えていただけますか?
杉山:業務は大きくデビューの前後に二分されます。デビュー前の段階では、オーディションの実施によってタレントを発掘し、選考を通過したタレントの希望を軸としたキャラクターや世界観の設定などを検討します。それをもとにLive2Dモデルを制作し、ライブ配信=デビューへと進めます。デビュー後は、配信活動をタレントと一緒になって考え、タレントの夢ややりたいことを実現するためにはビジネス面でどのようなサポートを行っていけばいいかを考えていきます。
ーー最近ではREALITY Studiosで新しく設立したVTuber事務所「FIRST STAGE PRODUCTION」から、1期生のタレントがデビューしましたね。手ごたえは感じていますか?
杉山:もちろんです。デビュー配信は3月10日(金)と11日(土)の2夜連続で行い、デビューした全員でバトンを繋ぐリレー方式で配信しました。また、デビュー配信直後には24時間企画を実施し、多くのファンに楽しんで頂くことができました。今回デビューしたメンバーは、数多くの応募者の中から選ばれた精鋭たち。選考のプロセスでは個々の才能をしっかりと見極めるために、応募者からの動画には全て目を通し、面接では応募者の夢やそれにかける熱量などをお聞きしてきました。実際、長く売れ続けているVTuberを俯瞰して見てみると、中身であるタレントの個性や、配信を長く続けられる意欲や熱量の方が重要に感じます。選考期間は約1カ月に渡り、この期間は他の業務に手を付けられないほど大変なのですが、このオーディションで今後の行く末が決まるといっても過言ではありませんから、手抜きは一切許されません。タレント個人の自主性を尊重しながらビジネスとして拡大していくために、コストや時間を十分かけていくことが重要だと思っています。
「成功するまでやり続ける」から必ず成功する
ーー今回デビューしたメンバーについては、今後どのような展開を考えているのでしょうか?
杉山:それぞれにキャラクターが異なるメンバーがそろったことで、幅広いユーザーにリーチできます。特定のユーザー層だけに絞った戦い方もありますが、1期生ということも加味して幅広く市場提案を行い、それぞれの取り組みの成功例や失敗例を学習しながら横連携し、全体として底上げできるような戦略を考えています。
ーー先行している他社との差別化はどのように図りますか?
杉山:メタバースはもちろん、ゲーム・アニメ、コマース・DXなど多角的な事業を持っているグリーグループだからこその強みを上手く活かしていきたいと考えています。エンターテインメントという領域ではアニメやゲームもあるので、さまざまな活用が見込めます。また、日本だけではなくグローバル視点で取り組めるのもグリーグループの優位点です。先人の積み重ねてきた手法に学びながら、展開する主要地域を検討し、広く配信する予定です。何よりも他社と異なるのは、グリーグループは創業者であり現会長兼社長である田中が、現在も陣頭指揮をとり、リスクをとった挑戦の意思決定をしているというところです。グリーのバリューにある「成功するまでやり続ける」のとおり、田中がやると意志決定したことは、ちょっとやそっとの失敗では諦めずにやり続けるということを意味しています。我々は短期的な視点ではなく、5年先、10年先の未来を議論しています。また、安定した基盤の中で長期的に活動を支えられる環境があることで、ファンからの信頼を得ることにつながると考えています。
夢や希望のあるタレントを発掘し、グローバル展開を通じて事業の拡大を目指す
ーー今後、どのようなVTuber事務所、運営会社を目指していきますか?
杉山:様々なファン層に支持されるVTuber事務所を複数運営していきながらグローバルに展開し、より多くの地域で、VTuberの認知及びファンを拡大していくことです。そういった意味でも魅力的なタレントの継続的な発掘は重要です。「FIRST STAGE PRODUCTION」では2023年4月1日から、次期所属タレントオーディションを開催しています。詳細はぜひこちらから。
ーー所属するタレントが増えるということは、人材の採用を積極的に行っていく必要がありますね。
杉山:そうですね。さまざまな職種を募集していますが、その中でもタレントと向き合うタレントマネージャーというポジションがとても重要だと考えています。現在VTuber業界は急速に成長しており、それに伴いタレントマネージャーの役割も大きくなっています。タレントマネージャーは、タレントのやりたいことや、なりたい姿に耳を傾けるコミュニケーション力がありながらも、同時に事務所の方針の接点を模索する力が大切です。これからまだまだ伸びるマーケットですのでそれなりの大変さはありますが、タレントの人気が出続けるか否かは担当マネージャーの手腕に大きく左右されるので重要なポジションですね。また、例えばゲーム開発のように3年4年の時間と数十億の費用をかけ、数百人レベルの規模感で進めるプロジェクトだと、一人が全体に与える影響は見えにくいものですが、現場での裁量や企画の判断を委ねる担当マネージャーが影響を与える範囲は目に見えて広く、とてもやりがいを感じていただけると思います。
可能性しかない市場に飛び込まない理由がない
ーー最後に、事業への意気込みや想いをお聞かせください。
杉山:VTuber事務所としてすでに先行している他社がいる中でどう市場を開拓していくか。これが、今後の事業を推進・拡大する上で重要なミッションです。ただ、コンテンツビジネスやタレントビジネスという枠で捉えた時に、広くこれまでの歴史を振り返ってみると、ある一部の企業だけが寡占する市場は見たことがありません。例えば、かつてのゲームの世界でもJRPGというジャンルがより人気を集めた時代もありましたが、今はマーケットの広がりに呼応してさまざまなジャンルが誕生し、多様な成長を見せています。そもそもVTuber市場は生まれてまだ5年です。市場としては我々は後発ですが、チャンスは間違いなくあります。今後、新規参入企業も出てくるでしょう。先述したように、グリーグループには長くチャレンジし続けられる基盤があります。ですから、多少の失敗があったとしても、大きくチャレンジしていけば絶対に勝てると信じています。世界にインパクトを与えられるような規模感で成長できる可能性に、今はとにかくワクワクしているところです。
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