「日本発のIPとゲームで世界を熱狂させる。」———この熱いミッションを掲げたグリーエンターテインメント株式会社が2021年7月1日、ついに始動しました。WFS、ポケラボと並ぶ、グリーグループのゲーム事業における3社体制のひとつと位置づけられた同社の設立の狙いから、今後の展望について各事業部門責任者に聞きました。
小竹 讃久:グリーエンターテインメント株式会社 代表取締役社長
2008年グリー株式会社入社。2011年4月執行役員 マーケティング事業本部長に就任し、2013年9月より取締役。2021年7月1日より、グリーエンターテインメント株式会社の代表取締役社長を務める。
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下村 直仁:グリーエンターテインメント株式会社 取締役 執行役員 第一ゲームスタジオ事業本部 本部長 兼 組織企画部 部長
2009年グリー株式会社入社。2015年よりゲーム運営に特化したファンプレックス株式会社の代表取締役社長を務める。グリーエンターテインメント株式会社では取締役および執行役員として第一ゲームスタジオ事業本部 本部長及び組織企画部 部長を務める。
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中村 慶太:グリーエンターテインメント株式会社 執行役員第二ゲームスタジオ事業本部 本部長
2011年グリー株式会社入社。一度転職後、復職し2020年よりJapan Game事業本部 Japan Game 2部 部長としてアーティストIPを起用したゲーム開発事業を統括。グリーエンターテインメント株式会社では執行役員として第二ゲームスタジオ事業本部 本部長を務める。
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渡邉 亮介:グリーエンターテインメント株式会社 執行役員 IPプロデュース本部 本部長
2010年にグリー株式会社に入社。2017年より、Japan Game事業本部 ライセンス事業部 部長。グリーエンターテインメント株式会社では執行役員としてIPプロデュース本部 本部長を務める。
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IPへのリスペクトから、さらなる価値を生み出す新たなサイクルを目指して
ーー昨年の設立発表から半年強、満を持しての始動ということですが、グリーエンターテインメント社はどのような経緯で誕生したのでしょうか?
ーーJapan Game事業本部で立ち上がってきた、ライセンス事業部がそのまま独立したということでしょうか?
小竹 :それとはまた少し違っていて。既存のライセンス事業ではアニメ製作委員会に参画、ゲーム化権を獲得し、他社と協業して開発することが多かったのですが、IPのグローバル展開において、スマホゲームが大きな役割を担ってきている中で、開発部隊を自社内に持っていないということが障壁になると感じました。アニメ製作委員会に参画しIPを生み出すだけでなく、自社でゲーム化しIPを大きくする。さらにそれをグローバル展開していく。そして、そこで生まれた熱量をまたIPに還元しファンに届けることができる組織が、これから必要になると感じたんです。
そこで、渡邉さんが担当していたライセンス事業だけでなく、ゲーム運営に特化した下村さんの旧・ファンプレックス株式会社、また、ここ数年で有力なタイトルを企画してきた、中村さんが担当するアーティストIPを起用したゲーム事業の3つをまとめ、ひとつの子会社として強化することにしました
ーーそれで皆さんにそれぞれ声がかかったと。その時はどういう反応でしたか?
渡邉:そうですね。これまでは3部門でそれぞれに事業を伸ばすことに注力してきていましたが、今回の子会社化にあたって新たな気づきがあったと思っています。ライセンス事業においては『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』など大型IPの製作に関わることができるようになってきましたが、ライセンス事業だけで伸ばすよりも、先程あった通りゲーム開発・運営まで一貫することで、ぐんと成長率が高まります。今までそれぞれに取り組んできたことの積み重ねがあって、そこから一歩先を進んだやり方を探す段階で、ちょうどひとつの会社として形になったと思っています。
下村:ファンプレックスは、設立時よりモバイルゲームの運営を専門として運営力を磨いてきましたが、1年ほど前に小竹さんから最初に今回のお話をいただいた時には、次のステップでよりインパクトの出せる案件に携わるためにはどうすべきかという議論の真っ最中だったんです。今回の統合でアニメIPやアーティストIPに強い、強力な助っ人がいる状態での企画や開発が可能になり、長期的な青写真を見据えた状態でタイトルを大きくしていくことができるので、自分たちが6年間培ってきた運営力の価値をより高められると感じています。
中村:僕が担当していたのはこの中では一番設立から日が浅い事業なのですが、アーティストIPを起用したゲームを企画し、外部のデベロッパーと協業して開発を行っていました。その中で有力なタイトルの企画にも携わってこれたのですが、座組み上なかなか継続的にタイトルを世に送り出すのが難しいということを課題に感じている中で今回声をかけてもらいました。一見、渡邉さんのライセンス事業と下村さんの開発・運営事業で完結しそうに見えると思うのですが、僕たちの事業では単にIPそのものをゲームに当てはめるのではなく、例えば新しいキャラクターやシナリオなど、ファンの方々に楽しんでもらうための付加価値を提供する企画づくりを磨いてきました。新会社においてもIPと開発の架け橋となる企画の部分で、価値を発揮できると考えています。
腹を割って話して感じたそれぞれの哲学を、1年かけて昇華していった
ーーこうした各事業を1社としてまとめるというのもひと苦労ありそうですね。
小竹 :最初はいろいろありましたよ。みんな自分の事業を伸ばすことに向き合っていたわけですから。実際、自社でゲーム開発をするとなったら、開発のリスクを背負うことになるので、費用もかかるし、人員も時間も年単位でロックされてしまう。だから腹を割って話すために、まずはこの4人と各事業部のメンバー数人ずつ集めて懇親会をやったんですよ。
中村:ミッドタウンのガーデンテラスみたいな、結構雰囲気のいいお店で(笑)。
小竹 :そしたら、のっけから「そういう赤字とか許容できない」ってピシッと言われちゃって懇親にもならず、1時間くらいでお開きにしたんですよ(笑)。
渡邉:まあ、途中で雨も降ってきましたしね(笑)。
ーーでも、腹を割って話すという目的には近づいた。
小竹 :そのことではっきりわかったのは、みんな、自分たちの仕事に対してそれぞれに哲学を持って取り組んでいる、という重要なことでした。
渡邉:そこから話がまとまるまで1年かかりましたが、みんなの気持ちを納得させるためには妥当な時間だったと思います。何度も会って、それぞれの足跡を辿って考え方を理解していくうちに、少しずつ具体的なアイデアや方法が出てくるようになりました。
転機となった代表との出会い。そして「熱狂」に込められた思い。
ーー実は皆さん小竹さんと業務で関わってきた期間は長いんですよね。
中村:僕はグリーに入社した当初はデベロッパーリレーション、いわゆる3rdパーティ向けの営業担当として小竹さんのもと働いていました。その後、一度グリーを辞めて別の会社に転職したんですよ。でも、その会社が最終的に事業を売却することになり、その過程で大変なことも多く、もう組織ではなく個人で働こうかな、と思っていたんです。その矢先に小竹さんから「また一緒にやろうぜ」という連絡をもらって。そのときの話を受けて、「小竹さんとならもう一回組織でやってみよう」と思うことができて、今があります。
小竹 :渡邉さんも元々、GREE Platformでデベロッパーリレーションの担当として入ってもらったんですよ。
渡邉:その後、一度非ゲームの新規事業の設立に伴いゲーム事業から数年離れていたのですが、その部門が閉じることになり、もう会社を辞めるつもりだったんです。大好きなゲームから離れてしまいましたしね。そしたら、小竹さんから突然「もう1回、ゲームで何かやろうよ」って言われて。僕も、「小竹さんとだったら、辞めなくてもいいかな」って思って今がある感じです。
下村:私は元々内製タイトルのプロデューサーをいくつか経験し、6年前から新規事業として立ち上げたファンプレックスの経営をさせてもらっていました。小竹さんには取締役として入ってもらっていたので、その間毎週のように話をしながら事業を進めていましたが、結構わがままを言って自分たちなりの試行錯誤をしながら経営させてもらっていたと思っていて。その6年間の間にどんな知見が溜まったのか、それらを持ってどう次のステップに貢献することができるのか、ということを今問われているかなと思っています。
ーーまさに小竹さんの元に再集結した皆さんだと思いますが、そうして生まれたグリーエンターテインメントとして掲げるミッションには、「熱狂」というキーワードが入っています。かなり強烈なワードだと思いますが、それをあえて入れたのはなぜでしょう?
下村:いくつかミッションの叩き台をつくるにあたって、「新しい付加価値をつくる」とか「ファンに喜んでもらう」という部分が打ち合わせの度に挙がっていたんです。IPを消耗させるのではなく、自分たちが介在することで、絶対的な付加価値を乗せる意識と覚悟が、全員の言葉の端々ににじみ出ていたんですね。また「熱量」というワードもよく出ていました。お客さまやIPに対しての熱量を上げていかないと、新しくつくる会社の存在価値はないのだ、と思ったときに「熱狂」くらいパワーのあるワードじゃないとダメだと感じました。この言葉を使ったことに、自分たちの覚悟が表れていると思っています。
小竹 :魅力あふれる日本発のIPのファンを、世界中にもっと増やしていく。それがグリーエンターテインメント社の狙いなので、「世界」という言葉もこだわり持って入れています。
日本から世界へ、IPの魅力が最も伝わるコンテンツを
ーーそのミッションを背負って、いよいよこれから始動となりますが、どんな会社にしていきたいですか?
中村:僕はこの会社で2つのことに取り組もうと思っています。1つ目は、僕たちがつけられる付加価値について、真剣に考えることです。新しいファンはもちろん、熱狂的なファンも熱くさせる、そういうものをチームとして真剣に取り組んでいきたいです。そして、2つ目は、個人的にグリーグループ史上最も衝撃を受けた「『ダンメモ(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか〜メモリア・フレーゼ〜)』の海外展開の成功」、このパターンをさらに広げていくことです。それまでの海外展開は、現地の方々の嗜好に合わせようとかなりローカライズしていたのですが、『ダンメモ』は日本発のIPとして、あえて多くを変えずに字幕をつけてリリースしたことで、海外でも大ヒットしました。つまり、日本のコンテンツのファンが世界中にたくさんいることを明らかにしてくれたんですね。
渡邉:私はゲーム、アニメ、IPは「誰かの心に一生残る」可能性があるものだと思っています。そういう可能性がある仕事を楽しんで、そして胸を張ってやっていきたいと思っています。ぜひ、一緒に働くスタッフの皆さんにも、そういう気持ちで取り組んでもらえたらと思っています。
下村:私は、ファンプレックスとして一緒にやってきた200名の人たちにとって、新会社になっても「自分たちの強みは通用する」ということを証明したいと思っています。今まで一緒にやってきたみんなで、グリーエンターテインメントとして世界で勝つ、そこを目指して頑張ります。
ーー日本発のIPが世界で通用すると信じ、立ち向かっていくと。
小竹 :日本から世界に挑戦できる事業として、インターネットは数少ない可能性のある分野です。その中でも、日本のIPのポテンシャルは間違いなく大きい。アニメで例を挙げると、今プラットフォームとしての動画配信サービスは猛烈な勢いで広がっています。また、アニメの製作委員会を通じてわかったことは、魅力的な原作が必ずしも全てゲーム化される必要はなく、ゲーム以外の最適な方法もあるということでした。どうやったらよりファンに喜んでもらえるか、というプラスアルファの価値感を第一に、IPの魅力が最も伝わるコンテンツを考えて提供する点では、ゲーム会社の範疇を越えても構わないと思っています。「日本から世界へ挑戦できるIPプロデュース集団」、グリーエンターテインメントはそこを狙います。
ーーありがとうございました!